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とても冴えた歯車 ページ4

携帯を握っていた力が抜けると同時に、私の全身の感覚はなくなった。頭が真っ白になったが、でも辛うじて視覚ははっきりしていて、ベルトコンベアのように流れる地面を眺めていた。
何本か川を渡った頃、今泉くんが「おい」と運転手さんに声をかけているのをぼんやり聞いていた。

「おい、高橋」

突然名前を呼ばれて、反射的に声が出る。

「はいっ!」
「はい」

重なった声に、「え」と目を見張った。バックミラーに映る運転手さんの目も丸くなっている。

「違う、お前の方だ」

彼の視線だけが私へ鋭く送られる。その言葉から、運転手さんの名字も高橋なのだということと、呼ばれたのは自分なのだと気づいた。

「な、なんでしょうか?」

「……お前」軽く顎を引いて、今泉君は長く口を閉じた。

「やっぱり、なんでもない」

言い終わる前に、今泉君に目をそらされ、強制的に会話を切り上げられた。

「高橋」

「はいっ!」

「違う、お前じゃない」

今泉くんは淡々としていた。

「高橋、近道あるか?」

「はい。ただいまカーナビで確認いたします。おそらく住宅街に入ればいくらか到着が早まるかと」

「急いでやれ」

「はい」

さっきの電話の話題を聞かれていることを思い出し、たちまち居たたまれなくなった。

「あ、いや、別に急がなくて大丈夫です」

「お気になさらないでください」

「い、いえ。そう言うわけではなくて」

私は少し身を前に傾けて、運転手の高橋さんに頭を下げた。

「そ、その、本当にお気持ちだけで、えっと大丈夫ですから。さっきの電話、あの、私の父親からで、京都に暮らしてる祖母が体調を崩したって話なんですけど、でも、えっと、急用ではなかったみたいで。だから、はい、そのまま、普通に向かってください」

敬語を喋り慣れていないのに無理にかしこまろうとしたので、かえって伝えたいことを回りくどくし、奇妙な話し方になった。でも運転手さんは眉を寄せるわけでもなく、私の言葉にバックミラーの向こうで「かしこまりました」優しく頷いていた。

「……そういえば、あの、インターハイ出場するって聞いたんですが」

またあの長い沈黙が来ることを予感して、苦し紛れに話題を振ると、「ああ」とそっけない返事が隣から返ってきた。

「……えっと、その、練習ってどれぐらいされてるんですか?」

「毎日できる限りやってる。70km以上は走る」

かつ者がすべてか→←だれの為か忘れた



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niko(プロフ) - 続き楽しみです!! (2021年2月24日 18時) (レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました!!面白いです!!!応援しています! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました!応援しています!次の更新楽しみにしています頑張ってください! (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます!無理せず頑張ってください! (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています! (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:杞憂 | 作成日時:2020年10月9日 22時

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