てをだすなお手つきだ ページ26
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ジャーーー、という水音が手洗い場から響いている。人影は端の蛇口にひとつ。その人影の隣には一台のロードバイクが留められていた。
顔を洗っている今泉くんが、洗い終わって上げた顔と目が合う。キュ、と音がして水音が止まると、蝉の音も何もかも静かになった。
「……あ、あの」
今泉くんは私に構わず、タオルに手を伸ばし、顔を覆って水気を軽く拭き、サッサと身支度を整い始める。
「こ、これ！」私は少し強引にアイスを差し出し、急ぎ足で言葉を繋ぐ。
「寒咲さんが！あの、みんなにって、こぉうて……いや、買って、くれて。それで、みんなに配ってて、あの、今泉くんも、どうぞ」
「……ビビりすぎだろ」
「えっ」
今泉くんは思ったより、あっさりアイスを受け取って私を一瞥した。
「とって食ぅわけじゃねぇ」
フンと鼻を鳴らす彼に、私は返す言葉もない。「じゃあな」と去ろうとする背中に、私は「ま、ちょ、待って」と呼び止めて、その勢いのまま腰を折った。
「あの、あのとき、ごめんなさい！」
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高橋は頭を下げたまま、続けた。
「あの場ですぐ、こう、謝ればよかったんやけど」
「…………何が」
「…えっと……その下心で、応援することを」
「別にいい」
俺は気の重さをため息にして、ハァ、と吐きながら「いちいち気にするな」と言葉を投げた。メソメソするヤツは見ていられない。こいつは自分の罪悪感を早く手放したいだけじゃないのか、と考えて、よけいにイライラした。
「どんな形であろうと、お前の応援はどこかで相手の為になっているはずだ。ロードレースはそういう大勢の応援やサポートで成り立ってる」
寒咲さんの言葉を胸の内に繰り返しながら、オレは横目に高橋を見て続けた。「昨日の帰り際にも言ったが、悪かったな」
「え……んっと、帰り？」
「俺も、言い方を選ばなくて。熱心に応援してもらうことのありがたさを、俺は忘れていた」
せめてもの同情で言葉をかける。オレだけ先に部室に戻ってしまおうと、去り際に置いていくつもりでオレは言った。
「お前の応援も無駄じゃねぇ」
「………………いい」
高橋は曲げていた背を起こし、オレをグッと見上げていた。
「私の応援は、無駄でいい」
「ハ？」
ゴクッと固唾を飲む音が聞こえる。高橋は視線を下に泳がせ、
「て……いうのは、まだ強がりです……」
と尻すぼみに声を震わせた。
「だろうな」
「でもっ」スー、という息を吸う音も細かく揺れている。
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niko(プロフ) - 続き楽しみです！！ (2021年2月24日 18時) (
レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました！！面白いです！！！応援しています！ (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました！応援しています！次の更新楽しみにしています頑張ってください！ (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます！無理せず頑張ってください！ (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています！ (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杞憂 | 作成日時：2020年10月9日 22時
