とけていくとろけていく ページ24
埼玉からアキバへ、誰かと一緒に自転車で走りることを提案するとき、小野田くんがかけてくれたあの言葉。隣で小野田君が照れ臭そうに頬をかいて私を見ている。
「鳴子君やったんやね」
「う、うん」
私と小野田くんが顔を見合わせて笑うと、鳴子くんが「ワイがどないしたんや」と顔を寄せてきた。そのとき「そろそろ着替えるッショ」と巻島さんが声を飛ばす。「す、すみません！」私は駆け足で部室から去り、その足で幹ちゃんを探しに寒咲さんの車まで戻った。
ちょうどダンボールを積み終えて、寒咲さんがバックドアを閉めたところだった。
「お、高橋さん」
目が合うと、寒咲さんは歯を見せて言う。
「お疲れ様です寒咲さん！荷物運んだり、何か手伝うことはありますか？」
「今日終わらせとく作業は全部なくなったな」
「そうですか……」
「ああ、そういえばもう一つ、仕事が残ってたな」
「手伝います！」
私が意気込むと、「じゃあ……」と言いながら寒咲さんは助手席の方に戻り、パンパンに膨れた白いビニールの手さげ袋を抱えて帰ってきた。
「ほれ」袋からひとつ、包装されたものを差し出す。それはソーダ味のアイスだった。あの日、小野田くんと食べた、あのアイス。
「今日、暑かったろ」
私は「熱中症か？」と尋ねられていたのを思い出し、おそらく部活の全員分あるアイスと寒咲さんを交互に見た。
「あ、あの、本当に、本当にありがとうございます。すみません」嬉しさと申し訳なさが入り混じり、言葉がうまく出てこなくて、ぎこちなく首を前に曲げる。
「いいっていいって。それより、最後の仕事。これをみんなに配ってきてくれ。頼めるか？」
「はい！」
私は寒咲さんから袋を受け取り、さっそく部室前で待機している幹ちゃんやサポーターの方々にアイスを配った。選手のみなさんには、手嶋さんや青八木さんがアイスを手に持って部室の中へ配りに行ってくれた。幹ちゃんは「きっとお兄ちゃん、自分は食べないつもりだろうから。お兄ちゃんの分も渡してくる」と寒咲さんの車に戻っていったので、私は自分のアイスを手に持ったまま、部室の前で二人が配り終わるのを待つことにした。部室の中はドア越しでもわかるほど賑やかになり、一層みんなの嬉しそうな声が聞こえてくる。
しかし、青八木さんがドアを開け、一人だけ外に身を出して、後ろ手にドアをバタッと閉じ、私を手招いた。手には、なぜか一人分のアイスの袋がある。
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niko(プロフ) - 続き楽しみです！！ (2021年2月24日 18時) (
レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました！！面白いです！！！応援しています！ (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました！応援しています！次の更新楽しみにしています頑張ってください！ (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます！無理せず頑張ってください！ (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています！ (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杞憂 | 作成日時：2020年10月9日 22時
