ねらい通りに ページ22
「お前ら何、コントしてんだ」
後ろから聞こえた声に振り向くと、丸く大きな体をした選手が肩を弾ませていた。確かこの人は田所さん。
「おっさんも混ざるか?」
おっさんじゃない、田所さんはおっさんじゃない、と言葉が出そうになったが、話が進むので言うタイミンングがなかった。
「いいじゃねーか田所、やったら様になるかもしれねぇッショ」
「確かにな。お前も一緒だぜ巻島」
「なんでそうなるッショ」
「ボ、ボク巻島さんの漫才見て見たいです」
部室から手に拳を握る小野田くんが目を輝かせている。
「ちょい待てぇ!漫才とコントは別もんやで小野田くん!だいたい漫才は……」鳴子くんがツッコミをしながら部室に入っていく。
「どう違うんだ?」田所さんが腕を組む。
「どっちにしろ俺はやらねぇッショ!!」
苦い顔で叫ぶ巻島さんを、田所さんがバシバシ叩いて「いいじゃねえか、コントなら俺がツッコミ」と巻島さんに訴え、二人は部室に入っていった。
総北は賑やかで楽しいだろうなあと、部室の入り口に立ち、みんなを眺めながら思っていると、ふと目鼻立ちの整った坊主頭の選手と目線がかち合った。
「君は、関西の出身だったのか」
確かこの人は部長の金城さん。きっと鳴子くんとの会話を聞いていたんだろう。
「は、はい……京都なんです」
その一言で部室内の空気がざわついた。
「京都人ッショ……」
「アレだ、京都人は腹黒って本当か?」
田所さんの何気ない呟きに、私は身を乗り出して言う。
「め、迷信です!」
しかし、皆さん反応はイマイチで、そばに立っていた金城さんなんか、穏やかに眉を下げて言った。
「うざいと思ってるならすぐ言ってくれ」
そんな寂しげな顔できるなんて。最初に金城さんに抱いていた緊張感や近寄りがたさは薄れ、私は必死に訴えた。
「思ってませんよっ!金城さん誤解です!」
部室からも小野田くんが頷くのが見えた。
「そ、そうですよ!高橋さんは京都でも田舎からきた京都人だからっ、た、たぶん純度が低いんです!」
「おい小野田、そういうこというと……それこそ嫌味が」田所さんが横目に私を見る。
「いや、小野田くんの言う通りなんですよ!京都言うても端っこからきたので!ほんまに!純度も低いし田舎もんやし!」
「嫌味どころか全力で肯定してるッショ」
巻島さんのツッコミに苦笑いを浮かべて、でも肩の力が抜けるような気持ちにもなった。
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niko(プロフ) - 続き楽しみです!! (2021年2月24日 18時) (レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました!!面白いです!!!応援しています! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました!応援しています!次の更新楽しみにしています頑張ってください! (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます!無理せず頑張ってください! (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています! (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杞憂 | 作成日時:2020年10月9日 22時