おいかけて追い越して ページ18
私は相槌を打つフリをして、隣を歩く手嶋さんを盗み見た。Tシャツとラフな運動靴。自転車に乗るには、適さない格好。
「総北ではマネージャーって、幹ちゃんだけ……なんですか？」
「おう、そうだな」
どうして急に？と手嶋さんが目で尋ねたけれど、私の視線が手嶋さんの格好に注がれているのに気づいて、また「ああ」と頷いた。
「でも、作業はなるべく選手同士で分担する。こういう風に。もちろんインハイメンバーは練習を優先するが」
手嶋さんが苦笑いを浮かべ、「この時期は、俺たちがサポートの役割に徹するんだ」と肩をすくめて見せた。
「……こんなこと、聞くのは失礼だと思うんですが、あの」
「どうした？」
喉がジンジンと熱くなり、アスファルトの照り返しがやけに眩しく感じる。小さく息を飲んで、私は口を開いた。
「自転車に乗らなくても、選手じゃなくても、サポートって出来る…….ものなのかな……って」
私は自分がいかに不躾な質問をしてるか、自分でちゃんとわかっていた。でも、手嶋さんや幹ちゃんの姿を見て、今泉くんに怒られて、御堂筋くんのことを思い出して、やっぱりこう聞かずにはいられなかった。
「生意気言って、本当すみません。でも、私、応援やサポートが勝負に関係あるか、不安に思えきて。本当、失礼なこと言いました、すみません」
「うーん、いや」
「気にすることないよ、Aちゃん」
振り返るとボトルを持った幹ちゃんがこちらに向かって歩いてきていた。後ろには青八木さんがタオルの束を抱えている。幹ちゃんは
「今泉くんのことでしょ？」
と私の隣に並んだ。私を挟んで手嶋さんが
「今泉？」
と聞き返す。青八木さんが手嶋さんの隣に並び、同じく首を横に傾けた。
「えっと、その」
私の声に、３人の視線が集まる。私は伝え方を間違えないよう、慎重に言葉を選んだ。
「さっき、今泉くんに教えてもらったんです。ロードレーサーにとって『勝つ』こと以外に価値はない。『応援』や『心配』で見返りを求めるなよって。私の高校にも自転車を頑張っている人がいて、私はその人のことが……その、好きかもしれなくて」
みんなの顔が見れず、手元のボトルに目を移す。照れと自信のなさが相まって声は次第に小さくなった。
「それで応援してて、怪我して欲しくないなぁ、もっと何かしたいなぁっていうの、こういうのは見返りを求める応援だから、今泉くんは『やめろ』と、そういう」
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niko(プロフ) - 続き楽しみです！！ (2021年2月24日 18時) (
レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました！！面白いです！！！応援しています！ (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました！応援しています！次の更新楽しみにしています頑張ってください！ (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます！無理せず頑張ってください！ (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています！ (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杞憂 | 作成日時：2020年10月9日 22時
