、とは辞書にない ページ17
◯◯◯◯◯◯
選手の飲み干したボトルを回収し、部室に運ぶ仕事を任されていた。だいたいを運び終えてベンチにまとめて置き、幹ちゃんがやって来るのを一人で待つ。
「ハァ……」
その間、ずっと今泉くんの言葉が頭から離れず、自然に口から乾いた息が漏れていた。
「おっきいため息だなァ、オイ」
「寒咲さん」
振り向くと幹ちゃんのお兄さんが腕組みをしながら苦笑していた。
「そのボトル、いったん洗うらしいから水場まで持ってきてくれって。手嶋が」
「は、はい」
「ぼーっとして、熱中症か?」
「い、いえ!それは全然大丈夫です。そ、そういうのじゃなくて、えっと」
今泉くんのことが、ちょっと苦手です。そう言ってしまってもいいか、とためらう気持ちがあった。今泉くんが言っていることは正しい。そもそも雑誌を読んでなかったのは自分の落ち度なのに。
「ん?」
答えを待つ寒咲さんが私の顔を浅くのぞき込む。
「あ、な、なんでもないです!このボトル、水場に持っていくんですよね?水場って……」
「ああ、部室の裏手に回ったところに手洗い場がある。行ったらわかるぜ」
私は裏手に回ったところを頭に思い浮かべようとするが、どういう道筋で行くのかさっぱりわからなかった。
「まあ、わからなければ車の方に聞きにきてくれ。俺はまだ荷物の整理をしてるから」
「わかりました!」
私は手に持てる量のボトルを抱え、残りの数本はベンチに置いたまま部室を出た。
裏手に回ったところ、校舎を貫くような入り口があって、奥に進めそうだったが今更、部外者が入って良いものか不安になった。周りを見渡していると、見覚えのある髪型の人がいた。
「あっ、あの……手嶋さん」
「お、ボトル持ってきてくれたか。サンキュ」
「えっと、そうなんですが、手洗い場の場所がわからなくて」
「そうか、そうだよな。ここの手洗い場わかりにくいから。案内するぜ」
手嶋さんは歯を見せるけれど、さっきまで別の場所に向かっていたはずだ。でももし、忙しくないのなら、甘えても良いかと思って「ありがとうございます」と素直に手嶋さんの後を追うことにした。
「ボトルって、毎日この量を用意して、洗ってるんですか?」
「まあ、そうだな。ただ、今日の練習は半日練習だから少ないほうだ。一日練習となると、この2倍はルーティンでボトルを使う。その時は洗うのも急ぐけどな、今日はもう選手たちは給水しねぇから、のんびり洗える」
「なるほど……」
136人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
niko(プロフ) - 続き楽しみです!! (2021年2月24日 18時) (レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました!!面白いです!!!応援しています! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました!応援しています!次の更新楽しみにしています頑張ってください! (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます!無理せず頑張ってください! (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています! (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:杞憂 | 作成日時:2020年10月9日 22時