なまいきだって叱る ページ15
「お疲れ様です、小野田君」
「あ、ありがとうございます!……って、あれ!?高橋さん?なんでここに?」
「私が呼んだんだよ」
幹ちゃんが私の背から顔を出し、にっこりと笑みを浮かべた。
小野田君の前でへたり込む鳴子君と、静かにこちらを眺める今泉君に「ハイ、タオル」と手渡しながら続けた。
「今日の荷物積みの手伝いと……みんなの走ってる姿を見せたかったの」
私は「みなさん、すごく速いですね。本当に、すごかった」と言葉を付け加えて鳴子君と今泉君にもドリンクを渡す。小野田君が私の背に「あ、のさ」とぎこちなく声をかけた。
「高橋さん。あの、インハイのことって……知ってたっけ?」
もしよかったら……、と言葉を繋げようとする小野田君に、「し、知ってます。あの、でも」私は頭を振る。
「行けそうにないんですインターハイ」
右耳の下がまた痒くなって、虫さされを引っ掻きながら答えた。
「家の事情で、ちょうど8月1日に京都へちょっとだけ戻ることになって」
小野田君が「そっか……」と頬をかく。するとその肩を押しのけて、鳴子君が身を乗り出した。
「高橋さん京都戻るんやな。お土産よろしゅう!」
「こら!」
幹ちゃんが何の躊躇いもなく、鳴子君の頭に鉄拳を落とした。「ぎゃー!」と鳴子君は額を押さえて膝を折る。
「冗談や冗談!この二人やと暗くなるやん、せやからワイが盛り上たろぉとして」
「言葉を選ぼうね」
「あはは……」
私は壮絶な光景を前にして頬をひくつかせた。
「ま、そういうことなら、今日はワイらのド派手な走り、目に焼き付けや!そうそう観れたもんやないからな!」
「うん!もちろん!」
そう返事をすると、鳴子君がしゃがんだまま上目遣いで小さく口を尖らせる。
「……『憧れの人』っちゅうのもインハイ出るんか」
私は黙って頷いた。鳴子君は歯を見せて口の端をあげ立ち上がる。
「ホンマは行きたいって顔しとる」
「え」そんな顔に出てたかな、と血の気が引いた。
「カッカッでも悪いなぁ!この『浪速のスピードマン』のワイが出るからには、当日コテンパンに潰れてまうやろな!高橋さんの知り合い言うたかて、ワイは容赦はせぇへんで!」
闘志に燃える鳴子君に、私は「えっ」とわかりやすく狼狽えた。それを見た鳴子君の口元には、ふたたび笑みが浮かぶ。
「好きなヤツがボロボロになるのが、そんな不安か?」
心配だ、御堂筋君は拒むだろうけど。
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niko(プロフ) - 続き楽しみです!! (2021年2月24日 18時) (レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました!!面白いです!!!応援しています! (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました!応援しています!次の更新楽しみにしています頑張ってください! (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます!無理せず頑張ってください! (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています! (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杞憂 | 作成日時:2020年10月9日 22時