けい譜を捨てて言う ページ13
そう意気込んだはいいものの、部室のまでは距離があって、着く頃には抱えていた手の関節がビリビリと痺れ、落とすのは時間の問題だった。寒咲さんに遅れをとりながら、なんとか部室の戸の前へ着くと、ちょうど部室のドアが開いて、中から二人の男の子が私たちを出迎えた。寒咲さんが二人に
「よォ」と挨拶しながら抱えたダンボールを顎でしゃくって見せる。
「これさ、中のベンチに置いてていいか、手嶋」
黒いTシャツを着て巻き毛の男子が「ありがとうございます寒咲さん、置いといて大丈夫です」と返事をする。幹ちゃんと私も寒咲さんに続いて部室に入った。
部屋は、汗やホコリの独特な匂いに満ちている。日の光が届かないからか、薄暗く肌寒い。窓の上には年季の入った賞状が並び、ロッカーと並んでロードバイクや部品の数々が整然と並び、息を潜めている。
私は初めて自転車部の部室に入った。この光景、きっと京都伏見の部室も似た雰囲気なんだろうか。御堂筋くんも普段はこういうところで、ミーティングや着替えをしているのだろうか。勝手な想像を膨らませながら、近くにあった室内のベンチにダンボールを置く。
「……」
ふと振り向くと、白いTシャツを着た金髪の男子が、私をじっと見つめていた。左目は前髪で隠れ、右の猫目がのぞく。男子の視線が、段ボールと私の顔を交互に移動していた。選手だろうか。マネージャーだろうか。
「あ、こ、ここに置いちゃダメでしたか？」
男子は首を振ってその場を離れてしまった。入れ違いで、黒Tシャツの男子がやって来た。さらに彼の背後には退出したばかりの白Tシャツの男子がいる。
「その段ボールもベンチに置いてていいぜ、後でまとめてクーラーボックスに入れとくから」
「は、はい」
「って青八木が」
黒Tシャツの男子が、うしろを親指でさした。後ろで白Tシャツの男子がコクッコクッと浅く首を動かした。そして、黒Tシャツの男子に耳打ちをした。黒Tシャツの男子は、幹ちゃんが隣にダンボールを置いたのを見計らって「あとさ」と続けた。
「初めまして、だよな」
「あっ、す、すみません！申し遅れました、私あの、えっと高橋、といいます。今日は寒咲さんの手伝いで」
「なるほどな、じゃあ今日はたくさん働いてもらうぜ。俺は2年の手嶋。こっちは同じく2年の青八木だ」
私は二人に大きく頭を下げて「よっよろ、よろしく、お願いします」と声を張り上げたが、あまりの緊張でその声は裏返ってしまった。
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niko(プロフ) - 続き楽しみです！！ (2021年2月24日 18時) (
レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました！！面白いです！！！応援しています！ (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました！応援しています！次の更新楽しみにしています頑張ってください！ (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます！無理せず頑張ってください！ (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています！ (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杞憂 | 作成日時：2020年10月9日 22時
