かちだけを見据えた ページ11
自分に厳しく、傷ついても、何があっても前に進んでいる。楽になる手段があるのに、そうすることもできるのに、自分を許さない。
ああ、御堂筋くんは、きっと自分を叱るように私を叱ってるんだ。そう気づいた途端、目の前で眉をひそめる御堂筋くんの姿に、たまらない気持ちになった。
「き〜ず〜つ〜い〜た〜ぁ？」
傷つく、わけない。私以上に傷を負っている御堂筋くんを前にして。
「ううん」
その言葉に嘘はなかった。嘘はなかったのに、あの時はそんな気持ちになったのに、今では霧がかかったように、強く確信できないほど、その気持ちをはっきりと思い出せない。
ああいう気持ちを『好き』っていうんだろうか。
言い切ってしまえるだろうか。
言い切れば楽になれるか。なりたいなぁ、楽に。
ヴーヴー！
携帯がうなり、部屋に薄く青白い光が広がった。携帯の画面に通知が映っている。
見覚えのないアカウントからのラインだ。アプリを開いて確認すると、それは寒咲さんからのメッセージだった。「小野田くんに教えてもらったんだ！よろしくね」と表示がある。私は友達追加をして、「こちらこそ」と返事をする。既読がついたのは1分も経たぬ内だった。
私の指が、考えるより先に動いていた。
「インハイのことなんですが、やっぱり私、行けそうにないです。ごめんなさい。ちょうど８月１日に京都に一旦戻ることになって」
そのメッセージにすぐ既読がつく。「そっか」と軽快な通知音とともに言葉が浮上する。
一言目から随分時間をあけて、「Aちゃんにもみんなの走ってる姿見て欲しかったな」とメッセージが送られた。
「私も、みんなの走ってる姿見たかったです」
泣き笑いの絵文字を語尾に付ける。既読はついたが、長い時間返事はなかった。
部屋の時計が秒針を刻み、外では鳩が喉を鳴らしている。返事を待つのはやめよう、と電源を消した。部屋が再び静まりかえる。
「じゃあ」
ポン！と、LINEの通知で携帯の黒い画面が青白く光った。
「明日総北の練習見に来ない？」
総北、とは高校の名前だろう。私が断ろうとするより早く、寒咲さんのメッセージが続いた。
「インハイで使う荷物をうちの車に積むことになってるの。明日。バスで運びきれない自転車のパーツとか移動中のメンテ用品とか。お兄ちゃんも手伝ってくれると助かるって」
メッセージを返さずに、しばらく右耳の下が痒くて指で押さえた。いつの間にか噛まれていたようで、赤くなっている。
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niko(プロフ) - 続き楽しみです！！ (2021年2月24日 18時) (
レス) id: 5a93e0b570 (このIDを非表示/違反報告)
Aaa(プロフ) - 更新楽しみにしてました！！面白いです！！！応援しています！ (2021年2月23日 21時) (レス) id: 71d8bfbda5 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 初コメ失礼します。面白くて一気読みしちゃいました！応援しています！次の更新楽しみにしています頑張ってください！ (2021年1月30日 1時) (レス) id: c173f50722 (このIDを非表示/違反報告)
tiku - 御堂筋君だけじゃなく、今泉くんや坂道くんの描写もリアルで面白いです。総北メンバーと仲良くなる過程が見ててホッコリします。ずっと応援してます！無理せず頑張ってください！ (2021年1月1日 1時) (レス) id: 198aa8db09 (このIDを非表示/違反報告)
こはたん - 面白くてついつい夢中で読んじゃいました。笑 次の更新楽しみにしています！ (2020年12月25日 20時) (レス) id: a69cf6929b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：杞憂 | 作成日時：2020年10月9日 22時
