テゾーロという男

18〈お仕事〉 ページ19

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ムクリと起き上がるテゾーロ。
それをじーっ、と見ていた

テゾーロ「おはようA」

『おはようございます』

以外とオフでもお行儀の良いひとだなぁと思ってると、大きな手の平で頭をワシャワシャと撫でられた。
何が起こったか一瞬考えた。今のって大抵の女子が堕ちる頭ナデナデ？
…………。

『ペットじゃありません！』

ニヤリと笑われ首輪の鎖を軽く引っ張られる。まさにペットのような扱い。遊ばないでよ…

タナカさんから、テゾーロの用意した黒いワンピースの着替えを渡されそれに着替える。左半身に白のラインが一本入っていた。

用意された朝食をテゾーロと2人で食べる。

テゾーロ「黒も似合っているな。悪の女になれそうだ」

悪ふざけで笑っている。

『私、絶対悪事はしませんから！』

テゾーロ「ハハハ！ 構わん。どうだ？ それでいいから俺の仲間にならないか」

『本当に悪いことはしないの？』

テゾーロ「ああ。そうだなぁ。Aは歌が上手い。バーでシンガーとして勤めないか？ お前の歌声はあの空気によく似合う」

『……！実はそれ、ちょっと夢だったんです！』

「夢」という言葉にテゾーロは密かにピクリとした。

今まで小さなバーでしか歌ったことがない私には充分過ぎる希望だった。

テゾーロ「決まりだな！ よし、食べ終わったらわたしの部屋に来なさい」

フォークを置いて口を拭き立ち上がった。
彼が自分のことを「わたし」と言うときは仕事モードのようだ。

テゾーロ「ああそうだ」

背後から耳元で囁く。

テゾーロ「お前は俺の物だ。裏切りでもしたら、これでいつでもお前を殺せる。覚えておけ」

背筋が凍る。
チャリ…と鎖を弄って彼の仕事場へ去った。

残りの朝食を食べる気にもなれずフォークを置いた。


書斎に1人で入るテゾーロ。
椅子に腰をかけるも仕事に手がつかない。

テゾーロ「臆病だな…おれは。一番離れて欲しくないやつを脅して」

俺にだって信頼の気づき方くらいわかってる。黒猫もバカラもダイスも信用してるからこそ、俺について来ている。もちろん、目的が一致しているからだ。
それに比べAは？ 俺のそばにいる理由がない。ただ俺がそばに置いておきたいだけだ。
あの夜の優しい顔を見ただけで、もう手放したくなくなっている自分がいる。

テゾーロ「A……」

コンコン
ドアをノックする音と「テゾーロ様、Aです」と今まさに頭の中でいっぱいだった女の声がする。

テゾーロ「入れ」

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