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10,取引が成立すれば ページ13

「────私が探偵社にお力添えを出来るとはとても思えません。それに、何時迄も福沢さんの家に御世話になる訳には行きません故、いずれは職に着き、独り立ち致します。例え勤めるとしてもそれ迄の期間に為ってしまいます。」





あくまで落ち着いた口調と冷静な表情で、Aは応えた。



「それに私の異能も万能ではありません。」



「何?」



「私が異能を発動出来るのは、自分が息を止めている間です。訓練はしているので、7、8分くらいは持ちますがそれ以上になると...」




それでも8分も使えれば上等だ。

しかし、しつこく追い縋るつもりは無かった。何よりも大切なのは此奴の気持ちだ。無理矢理社員にしたところで誰も得をしない。
だから、延長戦に持って行く。




「............分かった。それを踏まえた上で、取引をしないか。」



「取引、ですか?」




首を傾げるAに俺はああ、と頷く。




「正社員ではなくても良い。お前の職が決まり、一人で暮らし始めるまでの期間、探偵社が衣食住を保障する。その代わり、Aには時々探偵社の手伝いをして貰う。人手が足りない時、お前の異能が必要な時などに。もし気が向いたら、正式に入社をしても良い。それでどうだ?」




自分としては良く考えた方策だった。さて、Aはどう動く。








「.........その時々する仕事に、人を殺すことは、入っていませんか。」




ギュッと手を握り締め、Aは訊いた。

そうだ、此奴は魔都と呼ばれるこの横浜で、路上暮らしをしていた時期があったのだ。きっと沢山の死を見て、何かしら感じることがあったのだろう。






「絶対に無い。保障する。探偵社は人を護る組織だ。」



俺は強く頷いた。









それなら、とAが晴れやかな笑顔を見せた。






「取引成立ですね!いやぁ、この広い御家に居候させていただいているのも引け目を感じる部分があったので、良かったです!改めてこれからよろしくお願い致しますね!」







「ああ。」









探偵社員(仮)、Aの誕生の瞬間であった。





────────




「社寮に一人暮らしにしても構わないのだぞ?」


「......別にそれでも良いんですけど、一人だと淋しいじゃないですか。福沢さんが良いのなら、私は此処で暮らさせて頂きたいです。」


「.........そうか。それなら良い。」





此奴との暮らしを楽しんでいる自分がいるのも事実だ。別に断る理由も無い。

11,また一つ事件が起こる→←9,小さな嵐


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梅スイング(プロフ) - あんぱんさん» コメントありがとうございます!精一杯頑張るので、これからもよろしくお願い致します( ´ ▽ ` ) (2016年10月11日 17時) (レス) id: 14caee09cb (このIDを非表示/違反報告)
あんぱん - 社長かわいいなwww今後の連載期待しております。 (2016年10月11日 8時) (携帯から) (レス) id: 28273e2d77 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梅スイング | 作成日時:2016年10月1日 20時

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