Stand By You (ページ10)

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今日はバレンタイン。
まさかあんなことになるなんて思ってなかった。

全員で雑誌の撮影だった。
舞祭組とまえあしの撮影。

昨日、「明日は会えないから」と1日早いチョコレートをもらっていた。
彼女は俺が甘いものが苦手なのを知っていたけれど、形だけでもしたかったと言い、食べられなければメンバーのみんなと食べてと。

一粒ならいいがこんなに食べられないな、と悩んだ俺はやっぱりメンバーに食べてもらおうと持ってきた。彼女からとは言わずに、スタッフさんからみんなにと言えばいいかな。

舞祭組が撮影に行き、たまはトイレ～と行って部屋を出て行った。
部屋には藤ヶ谷と俺だけになり、藤ヶ谷は彼女のことを知っているし正直に話して、ほかのメンバーには彼女からだということは秘密にしてもらおうと思ってた。恥ずかしいし。
甘いもの好きな藤ヶ谷なら喜んで食べてくれると思ってたのに…

「なぁなぁ、藤ヶ谷。これさ…」

「ん？」

俺は鞄からチョコレートを取り出して、箱を開けた。

「彼女からもらったんだけど、俺一粒ならいけるけど全部はキツイからさー。一緒に食ってくんない？」

「は？」

藤ヶ谷の顔が強張る。眉間にすごい皺。

「いや、俺甘いの苦手って言ってたんだけどさ。形だけでもしたいから…って」

「でも…これは彼女から北山にあげたものだろ…。ほかの人に食べて欲しくなんか…」

「彼女が食べられないなら誰かに食べてもらってもいいしって言うから。
でもみんなには彼女からって言わないでくんない？恥ずかしいし。スタッフさんからみんなにもらったってことでさ。」

「わかった…」

なんだろう。甘いの好きなんじゃねーの？もっとこう…笑って食ってくれるもんだと思ってた。

「でも….俺はいいや…」
そう言った瞬間藤ヶ谷の目から涙が溢れた。

「え？あ、どうしたんだよ！？
なんかあったのか？俺でよかったら…」
話聞くぞ、と続けようとして藤ヶ谷に遮られた。

「なんでもないから！ほっといてほしい…」

部屋から出て行く藤ヶ谷の後ろ姿をただ呆然と見ていた。