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繰り返しキスを落としていれば、胸を叩かれる。
そこでようやく我に返って唇を離せば、頬を真っ赤に染めて目に薄らと涙を溜めた彼女が口を開いた。
『あ、の』
「ん?」
『御影、先輩は…?』
その言葉に、思わずカチンとくる。
あぁこれが嫉妬か、なんてぼんやりと思った。
「…いま玲王のこと気にする余裕あんの?」
『え、っと…っ』
もっと俺でいっぱいになってよ。
今だけは、俺以外のヤツのことなんて考えないでよ。
そう思って唇にかぶりつけば彼女の甘い声が漏れて、また彼女に夢中になる。
けれど自分の欲を抑え続けることに限界が近づいていた。
「玲王は先に帰ったよ」
『そ…です、か』
「…ね、目がとろんってなってる」
『それは、先輩が…』
「俺が、何?」
『…っ』
「顔真っ赤、かわい」
ぽやぽやとした表情の彼女に、意を決して口を開く。
「…ね、いい?」
ジャージの裾から手を忍び込ませれば滑らかな肌に触れて、全身の血が逆流していくような感覚を覚える。
ここで断られたらショックで死ぬかも。
なんて頭の片隅で思いながらなけなしの理性を繋ぎ止めていれば、彼女が小さく頷く。
そこで俺は理性を手放した。
「…ごめんね、A」
君には別に好きな人がいるのに、抱いちゃって。
そう思いながらも、やっぱり認めたくないからそれは言葉にはしない。
俺に抱かれている時の彼女はただただ綺麗で可愛くて。
無我夢中だったけれど事が終わり冷静さを取り戻せば、虚しさだけが残っていた。
『…謝らないで下さい』
「身体、大丈夫?」
『…はい』
「そっか」
ぼーっとする彼女が愛おしくて髪を撫でる。
このまま俺のことを好きになってくれればいいのに、と心の中で願った。
「…家まで送るよ」
『…大丈夫ですよ、一人で帰れるんで』
「さすがにこの時間は危ないでしょ」
そう言って家まで送ろうとするけれど、
『…あの、ここで大丈夫です』
「え?」
『もう家近いんで、一人で帰れます』
「ダメだってば」
『え』
優しい彼女は、断りきれずに俺に抱かれた。
だからそんなヤツと一緒に居るのは、嫌なんだろうけど。
それでも好きな子にこんな暗い夜道を一人で帰らせることも出来なくて。
「…心配でしょ。ちゃんと家まで送らせて」
『…すみません』
そう言って困ったように笑う彼女に、胸が締め付けられた。
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chiito(プロフ) - animestarmyu042さん» こちらの都合で申し訳ないのですが、今は別の作品を練っているのでまた気持ちがこちらの作品に向いたら書けたらなと思っております。気長に待って頂けると嬉しいです、よろしくお願いいたします…! (3月13日 17時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
chiito(プロフ) - animestarmyu042さん» 作品を読んでくださり、またそんなふうに言っていただきありがとうございます!いずれこの話の短編というか小話を書けたらと思って続編リンクを貼っておりました。なかなかいいアイディアが思い浮ばずこのままになっており申し訳ありません。 (3月13日 17時) (レス) id: db14ec3e34 (このIDを非表示/違反報告)
animestarmyu042(プロフ) - 続きが気になります。 (3月11日 21時) (レス) @page50 id: f7f1d51caf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:chiito | 作成日時:2023年4月24日 21時