2人に巡る春 ページ42
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桜が舞う季節、友人たちと袴を靡かせ卒業証書を掲げながら写真を撮る。
「ついに卒業かぁ」
「人生の夏休みが終わる…」
『あっという間だったね』
「Aは海外行っちゃうんだよね…」
『ん、そうだね』
「イギリスだっけ?」
『うん』
「結婚式には呼んでよね?」
『え、呼んだら来てくれる?』
「当たり前でしょ!」
「地球の裏側でも行っちゃう」
『ふふ、ありがとう』
なんて笑っていれば、友人の一人がハッとして一箇所を指さす。
「ねぇ、あれ…」
『…わ』
「…すごい花束」
目をやれば、眠そうな顔になんとも似つかわしくない大きな花束を抱えた、久しぶりに見る大好きな人がいた。
驚きながらも嬉しくて駆け寄れば、彼の表情は柔らかくなる。
「ん、卒業おめでとう」
『ありがとう、ございます』
「袴、似合ってる」
『…あの、どうしてここに』
「迎えに来るって言ったでしょ」
そう言って愛おしげに見つめられるから、胸がきゅっと締め付けられる。
「…好きだよ。これから先もずっとAを大切にする」
『…はい』
「だから俺と一緒に、イングランドに来てくれる?」
『…大好き。私も連れてってください、先輩』
そう返事をすれば花束ごと抱き上げられる。
「A、こっち向いてー!」
『え』
「うわ、めっちゃいい写真撮れたじゃん!」
「おめでとう、A。あとで送っとくね」
『…二人とも、ありがとう』
これまでたくさん勘違いして、遠回りして、後悔して、傷付いたし傷付けて来たけれど。
「やっとAと一緒に暮らせる」
『ふふ、私と会えなくて寂しかったですか?』
「寂しくて死にそうだった」
『……』
「照れてるの?相変わらずかわいいね」
『愛されてるなぁと思って』
「そうだよ、5年間も片想いしてたんだから」
『…そんなの、私だって』
それでも今、こんなに幸せなんだからきっと私たちに必要な出来事だったんだと思える。
もう繰り返さないように、これからは自分の気持ちと彼に素直でいると、薬指のダイヤに誓った。
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作者名:chiito | 作成日時:2023年4月14日 20時