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「理由は聞いても…？」
「あー…それは、勘違いしてたんです」
『え？』
この場で話せるようなハッキリとした理由がまさかあったなんて知らず、思わず私も先輩の方を見る。
すると少し気まずそうに説明をし始めた。
「高校生の、まだ僕がサッカーに関して無知だった頃にAさんの応援しているチーム名を聞いてたんです」
「…ならどうして」
「たしかマンシャインって付いてたなーって、うろ覚えだったんです」
『は？』
「入団前はまだAさんに僕が片想いしている状態だったんで、Aさんの応援してるチームに入りたくて」
「か、片想い…」
そこまで聞いて、何となく話を察する。
以前御影先輩との会話で感じた違和感も、先輩との会話で少し不思議に思った反応も、理由が分かった気がした。
「Aさんの応援するチームで活躍すれば、見てもらえるかなと思って」
「…ほう」
「だからシティに入ったんですけど、違ってたんです」
「二択で間違えたのね」
『その二択で間違えます…？』
「…ごめんなさいでした」
そう言ってお口をばってんにしている先輩を見れば、なんとも不純な理由でチームを選んだんだな、なんて笑えた。
『…けど、先輩の情報は自然と入って来ましたよ。ダービーマッチの時とか特に』
「なら作戦成功だね」
『すごく嫌でしたけどね』
「…言うじゃん」
『だって、先輩が私の好きなチームのライバルチームを選ぶから』
「…一応迷ったんだよ、どっちだったかなぁって」
『それでシティ選びます？』
「めちゃくちゃ根に持つじゃん」
「…すごいな、Aへの愛が深い」
「ふふ、これなら安心ね、お父さん」
なんて言いながら両親が嬉しそうにしてくれるのを見て、私も自然と顔が綻んだ。
「もうすぐプレミアも開幕だね」
「はい、Aさんとは遠距離になるのでご心配をおかけするかもしれませんが、大切にさせていただきます」
「しっかりしてるのねぇ、頼もしいわ」
「応援しているよ。不束者ですが娘をよろしくお願いします」
「ありがとうございます」
『…ありがと、お父さんお母さん』
両親の前でそんな風に約束してくれる彼を見て、自分がどれだけ大切にされているか思い知らされた日だった。
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作者名：chiito | 作成日時：2023年4月14日 20時
