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「とりあえず、その合コンは絶対に断って」
『…はい』
「で、大事な話があるから、学校の後は空けといて」
『…?はい』
「さっきの話も、あとで教えてあげる」
『…分かりました』
そう答えればいい子、なんて言いながら私の頭を撫でた。
「大学終わるの何時?」
『14時過ぎには』
「ん、じゃああとでまた迎えに来る」
『え、ここに?ダメですよ』
「どうして」
『先輩、有名人なんですし。目立つからダメ』
「…じゃあ車でなら来てもいい?」
『えぇ…』
「そのまま行きたいところがあるから。ね?」
『…分かりました』
「じゃ、着いたらまた連絡する」
それだけ言うと、彼は一つキスを落として行ってしまった。
マイペースなところは相変わらずらしい。
『ごめん、お待たせ』
「遅かったじゃん、A」
「ねぇ、さっきのあの人、知り合いなの?」
学食へ行けば友人たちに質問攻めに合う。
『うん、まぁ』
「めちゃくちゃカッコいいじゃん!」
「…ね、もしかしてA、あの人のこと好き?」
『へ?』
そんな風に一人が言えば、もう一人もその言葉に頷く。
「実はさ、友達経由とかでAの元カレの話ちょっと聞くことがあったんだよね」
『え、何それ』
「Aって性格も良いし美人なのに、どうしてどの人とも長続きしないのかずっと不思議だったの」
「そしたらだいたい、A自身が悪い訳じゃないって言われるんだよね」
『…どういうこと?』
「たぶん忘れられない人でもいるんじゃないかって」
「俺じゃ敵わなかった、って言ってる人もいたし」
『…それは』
正直これまで付き合った人たちと上手くいかない理由が、私自身ずっと分からなかった。
私は悪くないだとか、嫌いになった訳じゃないとか。
そんな風に別れを告げられることが多すぎて、よっぽど自覚のない欠陥人間なのかもしれないとすら思っていた。
「さっきのあの人、すごい必死な顔でAのこと追いかけて行ったし」
「Aを待ってる間ずっと二人でもしかして、って話してたの」
「そしたらこっち戻ってきたときのA、すっごい幸せそうな顔してたから絶対そうじゃん!ってなって」
どうよ、なんて少しドヤ顔で言ってくる友人たちには、どうやら隠し事は出来ないらしい。
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作者名:chiito | 作成日時:2023年4月14日 20時