また迷っても ページ31
.
『…あ』
「ん、まだ何か気になることある？」
『…どうして、今まで会いに来てくれなかったんですか？』
「え？」
『…どうしてあの日、すぐに追いかけてくれなかったんですか』
「…あー、それね」
いろいろな勘違いも誤解も解けたけれど、最後にそれだけが気になった。
最後に会ったあの日から、半月ほどが経っていたのだ。
『…すぐに、会いに来て欲しかったです』
「それは…」
『ずっと、苦しかった』
「ん、ごめんね。俺もちょっといろいろ頑張ってた」
『いろいろ？』
「うん。それはまた別のタイミングで話すよ」
なんてそこだけは何故か濁されてしまったけれど、その言葉を信じるしかなかった。
「…で？」
『え？』
「俺、何回も言ったよ。Aのことが好きだって」
『…っ』
真っ直ぐに見つめられてそう言われて、これまでのことを思い出す。
今までは信じられなかったその言葉が本心であったと分かった途端に顔が熱くなった。
「顔真っ赤じゃん」
『…それは』
「今まで同じことを言っても全然そんな顔しなかったのにね」
『…だって、嘘じゃないって分かったから』
かわいいね、なんて頬をするりと撫でられるから恥ずかしくなって思わず先輩の胸に顔を埋める。
すると先輩は腕を緩めて、私の両頬にそっと手を添える。
「Aは？俺のこと、どう思うの」
『……す、きです』
「…もっかい言って」
『高校生の頃から、今もずっと。…凪先輩のことが、大好き、です』
「…可愛すぎてムカついてきた」
『ん…っ』
そのままキスを落とされたかと思えば、そのまま食べられてしまうんじゃないかと思う勢いで舌が絡められる。
『だ、め…先輩、ここ、大学』
「可愛いAが悪い」
『ん、もう、ダメ』
そう言って押し返せば、少し不満そうな目で睨まれた。
「…あ、そういえば時間大丈夫？」
『…友達が学食で待ってます』
「そういえばさっきAの友達が言ってた合コンの話、断ってね」
『え？』
「何その反応、行くつもりだったの？」
『いや、そんなつもりでは』
そう答えつつも、私たちの今の関係の名前は何なのだろうと考える。
すると先輩はそれを察したのか、ずっと私の頬に添えていた手を離した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 143人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：chiito | 作成日時：2023年4月14日 20時
