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「A、ちょっとこっちいいか?」
『あ、翔!いま行くね。…すみません、ちょっと失礼します』


タイミングが良いのか悪いのか、翔から声がかかってその場を離れる。
そのあと参加者が全員揃ったところで組み分けをして紅白戦をして。

凪先輩と御影先輩が各チームに入ったことでかなり盛り上がっていたけれど、やっぱり私はあの頃と同じように凪先輩のプレーにばかり目を奪われていた。

そして時間はあっという間に過ぎて、夜の宴会に。
席は全員くじ引きで決めた結果、運がいいのか悪いのか私はあの二人に挟まれていて。
斜め前にもう一人の幹事がいたことが少し救いだった。


「スゲー、A引き強すぎだろ」
『すごいね、両手に花だ』


ふわりと鼻を掠めた、隣からする懐かしい匂いにドキドキしながらもそんな冗談を返す。


「花はオマエの方だろ、A」
『…海外行くとそんな感じになるんですか?御影選手』
「あ?何がだよ」
「プレミア選手は女の子の褒め方も一流っすね」
『ね〜』


最初はどうなることかと思ったけれど、御影先輩と同級生のおかげで自然と会話は途切れなくて。
それに加えて凪先輩は隣で眠そうに話を聞くだけだったから、気まずくなることもなかったのだけれど。


「けど本当に、A綺麗になったし」
『どうしよう、御影選手に褒められちゃった』
「…Aは昔から、ずっと可愛いよ」
『え』


それまで黙っていた先輩が突然そんなことを言うから、思わずそちらを向いて固まる。
するとこっそりと机の下で手が握られて、スルリと指で撫でられるから全ての神経がそこに集中してしまう。


「まぁAは我が部の天使っすからね!」
『…え、みんなが褒めてくれる。調子乗りそう』


やっとの思いで振り絞っても、そんな言葉くらいしか出て来てはくれなかった。


「Aは彼氏とかいんの?」
『いないです、最近はずっとフリーなんで』
「へぇ、もったいねぇな」
『え、ユナイテッドの選手とか紹介してもらえます?』
「俺はシティ所属だっての」
「しかもA英語喋れないだろ」
『外国語を習得したいときはその言語使ってる人と付き合うといいらしいよ』
「…シティの選手なら、優良物件紹介出来んだけどな」
『えー…シティかぁ』
「おま、意外と生意気なところあんのな」


私の手を握りながらいつの間にか眠ってしまった彼の隣でそんな軽口を叩いていれば、自然とお酒を飲むペースは早くなって行った。


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君は支配者に→←「あの頃」と呼べるときが



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作者名:chiito | 作成日時:2023年4月14日 20時

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