花の日にうまれた君に

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side:R



「忘れんといて。西畑大吾は世界で一番大西流星がすきって」


そう言って抱き寄せる大ちゃんはいつもよりちょっとお兄さんに見えた。


「一生、忘れんといて」


お姉ちゃんが好きな少女漫画とか恋愛ドラマに出てきそうな、少しくさいセリフやのに、これでもかって言うくらい安心する。
緊張の糸がプツンととけて、目尻から流れる涙が止まるまでただただ大ちゃんは流星を抱きしめてくれていた。


「おおにっちゃん、」


大ちゃん、


「すきやで」


流星も、大西流星も世界で一番西畑大吾がすきやで


「ずっと前から俺のすきは"そういう"すきやで」

『そういう...？』


少しハッキリしない表現に不思議に思って顔をあげると、すぐ目の前に大ちゃんの顔があった。
昔はあんなに大きかった大ちゃんと、今はもう背丈も変わらへん。


『ーっ、』


近くて、びっくりして顔を逸らしたのに顎に手を当てて元に戻される。


『もう、大ちゃん、』


恥ずかしいからヤメテ。
そう言おうと思ったのに、大ちゃんがあんまりにも真剣な顔してるから、なんやろ、どきっとしてしまう。


「...俺と、付き合ってください」

『えっと、』


はい、って答えは決まってるのに、そう返事するのにも緊張してしまう。こんなにみんなドキドキしながら恋愛してんの...？


「嫌になった時はいつでもやめてええから」

『嫌になんか...！』

「ちゃんと聞いて」


さっきみたい忘れてって言われるのか不安になった流星を大ちゃんは静かに制した。


「これから先、もしかしたら流星は女の子好きになるかもしらん。高校生になって周りも彼女できるし、そう思うことだって普通だと思う。もし、そうなっても、これから先、おおにっちゃんの中で俺が"そういう"すきじゃなくなっても、俺は今まで通り先輩として仲間として傍におる」



「.....やから、それまでの時間、俺に頂戴」


胸が苦しくなる。
自分で自分の気持ちがどうなってるんかわからない。
ただ、言えるのは、


『流星は、大ちゃんがすきやで』

「ん、俺も」


唇が重なる。
目を閉じるとまた少し残っていた涙が静かに伝った。

大ちゃん、大ちゃんはどこまで優しいの...？
優しすぎや、もっと、


『大ちゃん、』


もっと大ちゃんがワガママ言えるように、


「ん？」

『僕ら今日から恋人やね』

「ーーーっ、」


頑張るからね。


「もー、そういう可愛いのヤメテ」

『別にかわいくないです』

「可愛い、可愛いが過ぎてる」






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