＊ ページ38
今度は、私が俯いてしまった。
ショッピさんの言葉に、何も返せない。
危なくなったら、救援を求めるのは軍人として当たり前の事。
戦場から生きて帰るための鉄則だ。
それに……私のそれは、彼の声を無視したことになる。
心苦しい。
彼の呼びかけに間違いなんてない。
分かっている、私が軍人として少し外れた行動をしてしまっているのも。
頭では理解できても、私はどうしても“あの時”のことが思い浮かんでしまう。
そしてまた、声が聞こえるんだ。
“言うな”
グッと唇を噛んだ私を、ショッピさんが優しく呼んだ。
「俺は、頼りないですか」
『え……？』
思わず顔を上げると、彼は真剣に私の瞳を覗き込む。
「俺に言えへんのやったら、他の奴でも構わないっす。誰でもいい、あんたが言える人やったら、誰でも。あんな危険なマネするくらいやったら、ちゃんと合図出せる人と組ませてくれって、俺から言います」
ショッピさんの言葉に、胸が詰まる。
あまりに真っ直ぐで、もう隠し通せる自信がなくなった。
私の話を聞いても、きっと笑顔になれないのに……
それでも、またひた隠しにするのは何だか違う気がした。
観念して口を開こうとした所で、また声が聞こえた。
“言うな、誰にも言うな”
一瞬、言葉を飲み込みそうになった。
けど、ここで黙ってはダメだ。
今、また私が口を閉ざせばショッピさんはもっと苦しそうな顔をする。
そんな気がした。
『ショッピさんは、私を２度も助けてくれました。本当に感謝しています』
「じゃあ、なんで……」
『嫌、なんです。目の前で誰かが傷つくのが』
私の手の届く場所で、誰かが涙を流すのが耐えられない。
それを助けられないのも、辛い。
もし、私が助けを求めたせいで傷つく誰かがいたら？
そんなの……嫌だ。
船内で新兵さんを庇った時、私は命を落とすかもしれないと思った。
銃で撃たれた傷口は確かに痛んだ。
でも、新兵さんとショッピさんを守れたのが嬉しかった。
もし彼らが目の前で倒れるようなことがあったら……
考えただけでも、背筋が震えた。
『私が誰かの傷や痛みを代われるなら、私はどんな事でもできるんです。本当ですよ？なんでも笑ってこなせるんですから』
だから、あなたにも笑っていてほしい。
そう思いながら、私はヘラッと笑みを浮かべた。
大得意な笑顔だったのに、ショッピさんはちっとも笑ってくれなかった。
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双葉ちほ(プロフ) - #よにん。＠変人同盟さん» コメントありがとうございます！私もセレーナはお気に入りなので、嬉しいです♪ (2020年7月27日 17時) (
レス) id: 7ddb6147f4 (このIDを非表示/違反報告)
#よにん。＠変人同盟(プロフ) - セレーナちゃんちゅきだわ、、、気持ちわかるよ (2020年7月26日 21時) (レス) id: 56651a4ea9 (このIDを非表示/違反報告)
双葉ちほ(プロフ) - ああかさん» ありがとうございます！嬉しいお言葉……！更新、頑張りますね（笑） (2020年7月26日 17時) (レス) id: 7ddb6147f4 (このIDを非表示/違反報告)
ああか - うわぁ、、めっちゃいいです、、好きです。更新楽しみにしてます (2020年7月26日 0時) (レス) id: 0ba4941a1e (このIDを非表示/違反報告)
双葉ちほ(プロフ) - よにん＠変人同盟さん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです。 (2020年7月23日 17時) (レス) id: 35884a095a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：双葉ちほ | 作成日時：2020年7月2日 18時
