第4話 【ビアンカ】 ページ4
白い霧が立ち込め、まだ気温の低いセント・グラーナの朝。
湿った大気に、弓を引き絞る音が響く。
次の瞬間、
カッ!と乾いた音を立て、中心を綺麗に射抜かれた的が たわむ。
ふう、と息をつき、的に刺さる矢を引き抜いた影が一人。
セント・グラーナ屈指の魔法店『龍の住処』の店員 ビアンカだった。
人の少ない朝の街に、目を覚ますように徐々に活気が宿り始めている。
それに合わせ、彼女は日課である鍛練を止め、街へと下った。
王都の片隅に庇を構える『龍の住処』は、腕利きの魔導士ソソラの営む魔法店だった。
ビアンカは店員にして彼女の一番弟子、そして
「ソソラ様! 朝食は食べられそうですか?」
「無理... ウップ、き、気持ち悪い......」
信じられないほどに生活力の欠如した師匠・ソソラの世話係でもあった。
(さて、そろそろ お店開けないとな...)
少々 特殊な体質に苦しむ師匠の介抱もほどほどに、ビアンカは店先の
◇
最初に店の扉を叩いたのは、魔法ギルド『リンドヴルム』に所属する魔導士 レイシェリアだ。
「あら、いらっしゃいレイシィ。 今日はどうしたの?」
「魔法石の粉を80グラムと、杖の修繕をお願い。」
このレイシェリアとは、同じプラトー高原 辺境の生まれだった。
王都ではこんなにも魔法技術が進んでいるのに、彼女らの育った集落は、閑散さではリリーティア・シティ
にも劣らないほど何もなかった。
遊牧で生計を立て、女は家と子供を守る。
そんな暮らしを拒絶し、ビアンカはセント・グラーナを訪れたのだった。
...とまあ、これは昔の話。
魔法道具を扱わせたら一流の魔導士ソソラに弟子入りした彼女も、ただの見習いではない。
慣れた手つきで分銅と魔法石の粉を釣り合わせ、綺麗に包む。
「はい、80グラムで20リオン。 杖は、ソソラ様に欠損を見積もってもらってから修繕するわ。」
「ふふ、ありがとう。
そう言えば、リンドヴルムでまた祭りを開くんですって。 何でも、プラトーでの花見パーティーだとか。
『龍の住処』にはギルドがいつも お世話になってるから、ソソラさんとビアンカをぜひ招待したい、だそうよ。」
「へぇ...」
祭りへの好奇の念と僅かながら不安を胸に秘め、ビアンカはレイシェリアの背を見送っていた。
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鈴蘭(プロフ) - 書き終わりました。 (2018年3月24日 16時) (レス) id: e93f1f0567 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - 第5話書きます。 (2018年3月24日 14時) (レス) id: e93f1f0567 (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE@厨二の魂百まで(プロフ) - 終了しました。 (2018年3月16日 16時) (レス) id: d47704566c (このIDを非表示/違反報告)
MIZORE@厨二の魂百まで(プロフ) - 第4話書かせて頂きます。 (2018年3月16日 15時) (レス) id: d47704566c (このIDを非表示/違反報告)
鈴木燐架(プロフ) - やばっ報告忘れてた…終わりました! (2018年3月16日 7時) (レス) id: 0a601ec6bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:《リンドヴルム》メンバー x他3人 | 作者ホームページ:http:/
作成日時:2018年3月15日 9時