旦那様は登坂広臣 2

意地 ページ38

「はーぁ」



しんみりするのは嫌なのに
出るのはやはりため息




今日は有紗がももを保育園に連れて行くって
家を出たと同時に


忙しぶって、さっさと荷物を車に運び


ろくな会話もないまま


広臣は、私が荷物を積んでいる時に
お母さんとちゃんと話してたみたいだけど



「じゃあね〜
また連絡するからー」



なんて明るく言って
とっとと車に乗り込んで


広臣がすぐに車を出してくれて走り出すと



毎日、保育園まで病院まで行くのに
通っていた道路に、まわりの風景にやたらと寂しくなってくる


黙って運転している広臣も同じ気持ちなはず









お互い黙ったまま
高速をしばらく走っていると



「A？」



広臣の優しく呼んでくれる声に
ぐわっと涙が出そうになる



「なに？」


「うん

昨日さ、Aのじぃちゃんと話したよ」


「ふーん

何だって？」


「うん…

詳しくは分かんねーけど
今日、Aを連れて来てくれないかって

無理にとは言わないから
Aが来てくれるならって」


「そっか…

あの人生きてたんだ」


「だな、最近見ねーもんな

ってかあの人に何かあれば、それこそニュースになんだろ」


「そうだね

まさか、あの人広臣の事務所を利用しようとなんかしてないよね？

あーいう人こそ、支持率とかが大事なんだろうから

天下のLDHを味方につけようなんて考えてんだとしたら、最悪だよ」


「まさかそれはねーだろ

昨日、話した感じだと
ただの普通のじぃちゃんって感じだったけど

Aの事も孫娘って言ってたし」


「へーそうなんだ

孫だって思ってくれてたんだ

で、今日はどこに呼ばれたの？」


「ん？
赤坂の料亭」


「ふっ
やっぱそんな場所か

さぞかし超高級な料亭なんだろうね

さすが大物政治家は違うわ


よしっどうせ広臣も一緒に呼ばれてんだったら
2人で行ってやろうじゃん

それも、そんな場所だからってかしこまった格好なんかしてかないで

普段の私たちで行こう」


「え？
俺はAが行くって言うなら、一緒に行くつもりではいたけど

スーツ着てこうと思ってたんだけど」


「何でそんなの私は嫌だからね

それに、私なんかお嬢みたいな洋服持ってないじゃん

あっちに合わせるなんて、私は絶対にイヤだから

だからいつもの服装で行くから」


「分かったよ」



言い張る私に広臣は呆れてるけど
私にだって意地はあるんだからねーだ

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