登坂さん家（ち）

梛から ページ44

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なぎとふたりのバスタイム



湯舟にたくさんのアヒルちゃんを浮かべて



私の頃は黄色のがメジャーだったけど、今はディズニーやら何やらって色とりどりのアヒルちゃんがあって



あたしって収集癖があんのかな？
集めだすとそればっか買っちゃって、なぎより私のがそれに夢中かも








「さっなぎ。身体洗おっか」





十分あったまったから
そう言って立ち上がると





「ママ。ここいちゃい？」





急に帝王切開の傷跡を撫でてきた
なぎ





「ん？これ？痛くないよ」





そう答えたのに
なぎはずっと優しく撫で撫でしてくれてる



ちょいくすぐったいんですけど





「なぎ。こっからでてきちゃんだよねー」


「え…」





そんなこと教えたことないのに



もしかして



俗に言う胎内記憶ってやつ？





「そうなの？
なぎはここから出てきたの？」


「しょう」


「へー
なぎよく分かるね」


「うんっ
なぎねんねしてたりゃぴかって」


「なったの？」


「しょうだよ」





それって手術中のこと？
ぴかっはお腹から出た瞬間のこと？



私は意識が朦朧としてて
なぎの微かな泣き声しか分からなかったのに



なんか…



感動して泣きそう





「そうなんだ。凄いね覚えてるんだね。
でも痛くないからね。大丈夫だよ
なでなでしてくれてありがと なぎ」





なぎの頭を撫で撫でしてながら
そう言ってあげると





「ママもいたいいたいしてくりぇて
ありがとちょ


チュッ」





傷跡にキスをしてくれた
梛ちゃん









その様子を扉の向こうで聞いていた広臣



さっきからそこに居たのは分かってたけど
たぶん入ってこれなかったんだよね



静かに扉を引いて
中に入ってくると





「なぎ
ママのぽんぽんの傷は、ママの勲章なんだよ」


「くんしょお？」


「そう
なぎがママにあげた勲章」


「ふーん」





んなことなぎに言っても…って思うけど





「そうだよなぎ
ママに勲章ありがとね」





一応お礼を言ってみる



と…





「いえいえ
どういたまして」





"いたしまして"が"いたまして"だけど



そんなこと言いだすなぎに
広臣も私も笑っちゃう








そういえば
広臣言ってくれたことあったね



これはなぎ産んだ勲章みたいなもんだろ
この傷はてめぇの子産んでやって出来たんだって偉そうにしてろって



あれは凄く嬉しかった



今日はなぎに
心が浄化された感じ



ふたりとも
ありがとね

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