俺らが紫耀を守るから34

ちょっと昔のお話４ ページ40

平野side

平「だっ…だれ？」

岸「俺っ！岸！」

平「…えっ、岸くん？」



ドアの外からは岸くんの声がして。

そっと開けてみると笑顔の岸くんがそこに立っていた。



平「…なんで？」

岸「体調はどう？」

平「…げほげほっ…大丈夫…」

岸「どこがだよ笑 入っていい？」

平「…えっ？うっ、うん」



正直ホテルの部屋に誰か入れるのは久々で緊張した。
関西にいた頃は廉がしょっちゅう来てたんだけど、こっちに来てからはずっと一人だったから。
たまにおばあちゃんが来てくれたりはしてたけど。



岸「意外と片付いてるし広いじゃん」

平「まぁ…それで、なんでここに？」

岸「えっ？あー、心配になってさ、ちゃんと飯食ってんのかなって」

平「あっ…そういえば何も…忘れてた…」

岸「やっぱり」



昨日帰ってから何も食べてないことに今気がついた。
水分は取ってたけど。



平「けほっ、、でもうつっちゃうから…」

岸「いいからいいから。熱は？」

平「えっと…まだ少し…」

岸「そっか。食欲は？」

平「ちょっと…減ってきた…」



何も食べてないと思ったら不思議とお腹が空いてきた。
でも今何もないんだよな。



岸「よかった。ちょっと待って」



岸くんはそう言うと、リュックを下ろしてガサゴソと中を探っている。



岸「おいっしょ。これ」

平「…えっ、、これって…」

岸「作ってきたんだ！」

平「…肉じゃが…」



タッパーの蓋を開けると、ジャガイモににんじん、お肉や糸こんにゃくが入った見るからに美味しそうな肉じゃがが入っていた。


ままが昔作ってくれた肉じゃがに似てる…



岸「しょう？」

平「…えっ？けほっ、、あっごめん！ありがとう！」



それはまだ十分にあったかくて、有り難くいただくことにした。



平「あっ…もぐもぐ……おぃ…しぃ…」

岸「おっよかった！」



それはすごく優しい味がして、寂しい心を癒してくれる味で、懐かしい味で…



平「…っ…」

岸「ん？しょう、食わねぇの？」

平「…ッ…ごめっ…」

岸「えっ！泣いてんのか？！」

平「…うっ…ぐすっ…」



突然溢れ出てきた涙が止まらなくて、岸くんが焦りながら隣に座って「まずかった？ごめんな！味付け間違えたかも！」とか言いながら背中をさすってくれて。

ああ、岸くんはこういう人だもん。
暖かくて優しくて、人間味に溢れる人。



平「ううんっ、岸くん、すごく美味しい。ありがとう」

岸「そうか！よかった！」



岸くん、ありがとう。

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