俺らが紫耀を守るから20

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平野side

ガチャ

バタンっ




平「はぁぁ…」



ドアを背にズルズルと座り込む。



危なかった。
バレるかと思った…

みんな、特に廉は勘が鋭くて、俺は人より嘘が下手らしいからよく見抜かれる。



夕飯断った時もほんとに顔が怖かった。

「体調悪いんちゃうやろな？それとも何かあったんか？」って。



ごめんね、言えなくて。


俺、まだまだking＆prince でいたいんだ。
みんなと一緒にいたいから。








平「いっ…」



今日はかなり傷が痛むな。


真っ暗な部屋の中。
窓からは綺麗な三日月が見えていた。





平「はぁ…俺、、なんで…毎日…殴られてるのかな…」




仕事して疲れてる中で殴られ蹴られ…

俺ってなんなんだろ。




平「楽に…なりたい…」




ぼーっとした頭で引き出しから取り出して、そっと手首にあてる。




平「んっ…はぁ…気持ちぃ…」



生臭い鉄の匂い。



平「はぁっ…んんっ……はぁ…はぁ…」



切るたびに手首から滴り落ちるそれ。

でも部屋が暗いから色は真っ黒で、なんだか自分の心がそのまま表れているようだった。



数日前、毎日続く暴行に耐えられず試しに切ってみたらすごく気持ちが良くて、この時だけは嫌なことも忘れられた。

俺にとっては至福の時間。

俺、ちゃんと生きてるんだって、この間だけは感じられるんだ。







平「はぁ……ぁ、、そろそろ…寝なきゃ…」




アイドルという特殊な仕事。

どれだけ忙しくても肌が荒れるわけにはいかないし、疲れや隈を顔に出したらいけない。

それだけでファンのみんなを心配させちゃうし、自己管理ができないってことでもう使ってもらえないことだってある。


寝られなくても寝ないと。



ティッシュで血を拭き取り、手首に包帯を雑に巻いて布団に入った。


目を閉じよう。
寝られなくてももしかしたら…


いつもは寝られないのに、この日は相当参っていたらしい。


いつのまにか泥のように眠りに落ちていた。









・







pull…pull…





平「ん…」





えっ、朝？


外が明るい…

ちゃんと朝を迎えたのなんて久々だ…





pull…pull…


平「ぁ、電話…もしもし…」

マ(出たっ！平野！まだ寝てるんじゃないよな？！！もう家の前にいるから早く来いっ！！)

平「えっ、いま何時……うそっ！！」



やばいっ、寝坊だ！

いつもどうせ寝られないから目覚まし合わせてなかった。



平「すぐ行きます！」



慌てて着替え、カバンを持って部屋を飛び出した。

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