Quasimodo Ⅱ 【short story】 (ページ36)

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雨音 ③ ページ36

雨で濡れたブラウスが…

肌にまとわり付いて…

淋しい気持ちになる。

…そんな時にふと響いて来る…

透き通るような、柔らかい音色…

…稜雅さんのピアノの音だ。

それは心にすっと入って来て、

身体中に染みて行く。

………あまりにも

…優し過ぎて、

涙が出そうになる。

だって……、

その音色が私に思い知らせるから。

私は……

･

この人の事が好きなんだと。

ピアノを弾いてる稜雅さんに…

そっと近付く。

…すると、動いた自分の身体から

…雨の匂いがした。

「……」

借りたバスタオルにくるまりながら…思う。

稜雅さんも…きっと、

同じ匂いがするハズだと…。

濡れたままの髪を、時折り揺らし…

何処か現実の世界ではない一点を見つめるように、

静かな眼差しで…

ただただ…、指を弾ませている稜雅さん。

私は…ピアノの横に立ち、

そっとピアノの上に手を乗せた。

…稜雅さんの奏でる音が…、

振動となって、身体中に響く。

手のひらからビリビリと伝わって来る…音。

………それが…痛い。

………痛過ぎる…。

その振動は…私の心を震わせ、

大きく揺さぶる。

……稜雅さんを好きなこの気持ち……

いったい、どう葬れば…いいのか。