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千景さんは名前で呼ぶと満足したらしく、すぐに自分の席と思われる場所に座った。ふと扉の方を見ると、茅ヶ崎は固まっていた。
「至さん!そこに立たれると邪魔っす」
「あ、ごめん」
春組の皆木に言われて、その場から離れる茅ヶ崎。どうしたんだろ。
「茅ヶ崎どうした?お前、体調でも悪いのか?」
私は茅ヶ崎の方に行って、聞いてみた。
「いや、大丈夫。立花の方は?二日酔いとか」
「それ、千景さんにも聞かれた。そんなに飲んでた?」
一瞬表情が強ばった気がするけど、すぐ営業スマイルになった茅ヶ崎。本当、こいつ大丈夫か?
「水飲むようにグイグイと。そんなに強くないんだから、気をつけろよ」
「マジか…。ごめんな」
水飲むようにとか、何杯飲んだんだろ。まぁこの体質に感謝だな。
「……茅ヶ崎。お前、一徹したか?」
「なんで?」
「ここに隈がうっすらと」
背伸びして親指で、茅ヶ崎の目を下を撫でた。また周りからの視線をかなり感じる。気にしてないけど。
「あぁ。ちょっとな」
「仕事?私が昨日いろいろ手伝ってもらったから、終わらなかったか?なら手伝うんだけど」
「いや、仕事ではないし手伝ったのは俺がしたかったからだから、それで溜まったんなら自業自得」
「茅ヶ崎らしいな」
その答え方が茅ヶ崎らしくって、笑ってしまった。
「まぁでも茅ヶ崎は顔整ってるんだから、徹夜とかして隈つくるとか勿体無い」
「……ありがと」
珍しく茅ヶ崎が照れた気がするけど、優しいから触れないようにしてやろう。
「至さん、昨日なんでイベやんなかったんすか。って、耳赤っ。タコみてぇ」
そう言いケラケラ笑う、今談話室に入ってきた奴。茅ヶ崎がボソッと「後で万里しめる」とか言ってるけど、聞こえないふりしてやろう。
「ねぇ、左京。各組の公演って、映像で残ってたりする?」
寮に来てみて思ったこと。お父さんの劇団をこんなにも、賑やかにしてくれたいづみ。正直、今まで春組公演(千秋楽のみ)にしか来てないのを後悔している。大好きだったお父さんの、一番好きだった場所。いづみが立て直した各組の公演を、ちゃんと見たいと思った。
「あると思うが、そういうのの管理は監督だから姉に聞け」
「はーい。じゃあ起こしてくる」
「立花。多分、真澄がドアの前とかにいると思うから」
茅ヶ崎に言われたことは意味がわからなかったが、碓氷がいづみの部屋周辺にいるってことは分かった。「了解」だけ言って、いづみを起こしに行った。
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てら(プロフ) - 自分にも似た様な経験があるので主人公の気持ち痛いほど良くわかります。主人公がまた職場に戻って欲しい気持ち半分、無理しないで欲しい気持ち半分です。この暖かい環境で主人公がまた心から笑える日を楽しみにしています。続き楽しみにしています、頑張ってください! (2019年10月14日 23時) (レス) id: dc9ce9c8b0 (このIDを非表示/違反報告)
ginmikoto(プロフ) - 上司に殺意が湧きました。至さんも千景さんもツートップで推しなので恋愛でどちらかを選ぶなんて、私はおそれおおくて出来ませんね笑。でも、更新すっごく楽しみにしてます!頑張ってください!そして至さんの教育係の人に惚れました。笑 (2019年4月4日 0時) (レス) id: 91596e022c (このIDを非表示/違反報告)
椏萌☆紅弥 - これは泣くな。(確信) この話や読んだら寝ようと思っても続きが気になって更新されてる分全部読んじゃいました笑 頑張ってください! (2018年10月22日 23時) (レス) id: d67f03efe8 (このIDを非表示/違反報告)
夢花(仮垢) - やばい…たるちもチカちょんもイケメソすぎるて。 (2018年7月1日 20時) (レス) id: 1ce7d18474 (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ(プロフ) - 千景さんかっこいい…頑張ってください!! (2018年6月14日 21時) (レス) id: dc516c7501 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:李人 | 作成日時:2018年5月12日 10時