ドラケンを捜せ #1 ページ37
ヨーヨーを釣っていたらポツポツと雨が降り出してきた。
雨は次第に強くなっていき、既にザーザー降りである。
わたし達は屋根のあるベンチへ避難していた。
「A、濡れた?平気?」
『うん、少しだけだから大丈夫。』
「雨かぁ。もっと遊びたかったな。」
『うん、止むといいんだけど…』
と、外を見るが、まだまだ止みそうな気配はない。
「まぁ、いっか!話してればその内止むだろ。」
『うん、』
とその時、わたしの携帯が鳴った。
そこにうつるのは三ツ谷の文字。
(三ツ谷…?)
千冬を見れば頷いてくれたので、電話に出てみる。
『もしもし?』
「A?悪ぃ、祭りなのに電話して。」
『ううん、大丈夫だよ。何かあったの?』
「あぁ、それが…」
三ツ谷がした話にわたしは耳を疑った。
パーちんの事を東卍は見捨てたと思い込んでいるぺーやんが愛美愛主と組んでドラケンをまくるという話。
ドラケン狩り…
「A、ドラケンと一緒?」
『いや、今日は会ってない。』
「捜せるか?」
『勿論。千冬と捜してみる。』
「頼む。俺もすぐそっち行く。」
『分かった。』
電話を切って千冬に三ツ谷から聞いた話をすると
千冬はすぐ頷いてくれた。
「行こう。」
傘をさしながらふたりで走る。
森の中、お祭りの会場、
至る所を捜してみるがドラケンの姿は見えない。
傘をさしていても走っていれば容赦なく雨はわたしを打ちつける。
既に浴衣は泥で酷い事になっているが、今はそんな事気にしていられない。
捜しながら思う。
パーちんが捕まってぺーやんはきっと不安だった。
どうにかしてやりたいって誰よりも思っていたのはぺーやんだったのかもしれない。
ぺーやんとちゃんと話す時間を作れば良かった。
わたしやみんなの思いをちゃんと伝える時間を。
自分の事でいっぱいいっぱいで周りの事なんて全然考えていなかった。
『ッ、』
……悔やむのは後だ。
今はドラケンを早く見つけないと。
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作者名:Tmwixx | 作成日時:2022年10月10日 9時