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「ほら、A。」
意を決して電話に出る。
『も、もしもし。』
「A?今電話した?」
『うん…ごめん。切っちゃって。』
「いや、全然。なんかあった?」
『……』
ふと思う。
とりあえずお祭りより先に言わなきゃいけない事があるではないか。
「A?」
『…マイキーと、仲直りしたよ。』
「……え!?!?」
『さっき、仲直りした。』
「ほんとに?」
『うん。』
「そっか…そっか。良かった。じゃあ東卍も?」
『うん。辞めない。』
「うん。ほんとに、良かった。」
声から安堵しているのが伝わってくる。
『心配かけてごめんね。』
「ううん。仲直り出来て良かったな!」
『うん!』
前を見ればエマが手で言え、言え、と言っている。
『あ、あのね、それでね、えっと、』
ここからが問題だ。
「お祭り行かない?」の言葉がなかなか出てこない。
ほんとになんでこんなに緊張するんだろう。
エマを見れば口パクで何かを言っている。
(あさって…?)
お祭りに誘うのを手伝ってくれるらしい。
頭が真っ白なので、とにかくエマの言う通りに言ってみる事にする。
『あ、あさって、』
「明後日?」
「(おまつりに)」
『おまつりに、』
その先をエマは言おうとしなかった。
その代わり体の前で拳を握ってこちらを見る。
この先は自分の言葉で言えとの事らしい。
『…』
「…」
うるさい。
心臓がうるさい。
何を…言えばいいんだっけ…?
わたし今なんて言ってたっけ…?
千冬も何も言おうとはしない。
これはきっと、わたしが言わなきゃだめなやつだ。
『えっと…、』
相変わらず頭が真っ白なわたしは
とにかく思った事を口に出してみることにする。
わたしはどうしたかった?
わたしは…
『千冬と、お祭りに行きたい。』
「…」
『…』
「うん。行く!俺もAとお祭り行きたい!」
その言葉に自然と顔が綻ぶ。
千冬はいつもそうだ。
ただ「行く」ではなく、「俺も行きたい」って言ってくれる。
一緒にお祭りに行きたいのはわたしだけじゃなくて千冬もなんだな。って思うと心があったかくなる。
『うん!』
「A、嬉しそうだね。」
「Aさんのあんな顔、初めて見ました…。」
「Aのあの顔を引き出せんのは、千冬だけだからな。」
千冬との電話に夢中になっていたわたしは、3人がそんな会話をしていたなんて知らなかった。
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作者名:Tmwixx | 作成日時:2022年10月10日 9時