ヒメ【東京リベンジャーズ】参 (ページ26)

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ガチャ

部屋に戻れば出て行った時のまま。

まさか帰ってくるときは東卍を抜けているなんて、
思ってもみなかったな。

まぁ、当たり前か。

自分が東卍を抜けるなんて想像すらした事ない。

掛けてある特服から見えるのは、総長側近の文字。

側近ならマイキーに賛成するべきだったのかな？

そうすれば抜けずに済んだ？

あんな事言われる事なかった？

…でも、釈放するなんてとても賛成出来なかった。
それがパーちんのためになるとは思えないし、
何よりそんな事きっとパーちんは望んでない。

『……』

側近…か。

側近ってなんなんだろう。

わたしはただマイキーをまもりたかっただけなのにな。

…そんな事考えたってしょうがない。

だってわたしはもう東卍じゃないのだから。

『……ッ、』

ふと頭に流れてくるいつの日かの千冬の言葉。

“落ち込んだり凹んだりしたら俺の所に来なよ。こうやっていつでもぎゅーってしてやるから”

『…ッ、』

わたしは部屋を出て走った。

ただ、千冬に会いたかった。

――

千冬の家までひたすらに走る。

千冬と圭介の住む団地に入り、もうすぐ千冬の家という所で公園に見慣れた人影がふたつ。

考えるよりも先に足はそちらに向かっていた。

そしてそのまま正面から飛び込んだ。

「うおっ！……A？」

突然飛び込む…というより、体当たりしたわたしにびっくりしながらも千冬はちゃんと受け止めてくれた。
何も言わずただ顔を埋め離れようとしないわたしに千冬は黙って背中に手をまわしてくれる。

千冬のその手と、匂いと、音に安心したわたしの目からは止まったはずの涙がまた溢れてくる。

『…ッ、』

「…」

泣いている事に気づいた千冬は背中をさすってくれた。

その手とはまた別の手がわたしの頭に2、3度触れる。

それに更に安心したわたしは堰を切ったように声を出して泣き崩れた。