苗字かっこよ！ #1 ページ12
小学5年の春。
あれから欠かさず道場へ通っている。
稽古を積み重ねると少しずつ自分が強くなっていくのを実感出来た。それがとても嬉しかった。
マイキーの蹴りも見よう見まねだが形になってきている。
これも圭介のお陰だ。
まぁ、本家と比べるとまだまだだけど。
そして今日も道場へ行こうと足早に下校していると誰かに呼び止められた。
「A！」
『？』
声のした方を見てみればマイキーが立っている。
飴を舐めながら。
いつの日だったか、万次郎から
「今日からマイキーと呼べ。」
と言われた。
『なんでマイキー？』と聞くと
「マイケルのマイキーだ!!」
とよく分からない返事が返ってきた。
とりあえずマイキーと呼べとの事なので
その日からマイキーと呼んでいる。
あとからエマの為なのだと真一郎くんから聞いた。
マイキーなりの優しさなのだと。
今では“七小のマイキー”はちょっとした有名人だったりする。
そのマイキー様が呼んでいる。
『どうしたの？マイキー。』
マイキーの隣に知らない人がいるのに気づく。
こめかみに刺青。
中学生だろうか。
前までのわたしなら刺青なんてしている人を見ただけで恐怖だったに違いない。マイキーや圭介といるようになってだいぶ免疫がついたみたいだ。
いや、でもこめかみに刺青をしている人なんてはじめてみたけど。
「オレを呼んでる人達がいるんだって。」
『…ん？うん。』
呼んでいる…とはそういう事なのだろう。
何故わざわざマイキーを呼んだのか。
その人達に同情していると、マイキーが言った。
「Aも一緒に行こ。」
『え』
「え」
刺青さんとハモってしまった。
マイキーが行くのにわたしが行く必要ある…？
それよりわたしは道場に行きたい。
そんなわたしの思いを見越してか、マイキーが続ける。
「蹴り見せてやる。」
『行く。』
食い気味に答えてしまった。
マイキーが勝ち誇っているような気がするのは気のせいだろう。
わたしとマイキーのやりとりを見ていた刺青さんが慌てて口をひらいた。
「待って、その娘も行くの？」
「うん。だめ？」
「だめっていうか…行かない方がいいんじゃ…」
「なんで？」
「なんでって…」
刺青さんは見かけによらず優しいらしい。
多分マイキーの強さを知らないから、わたしに危害が及ぶのではと考えてくれているのだろう。
でもそれは杞憂だ。
2人のやりとりを遮って言った。
『大丈夫だよ。早く行こ。』
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作者名：Tmwixx | 作成日時：2022年7月23日 10時
