私の赤色ヒーロー【赤】 (ページ4)

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一瞬だった。

効果音が付くほどに、パッと目が覚める。

あたりを見渡す。

ここは、病院…？

そこでやっと理解した。

あれは夢だったのか。

それにしても酷い夢だ。
なんで今さら…

『やっほー』

「っ…先生」

『ちゃんと寝れたか？もうすぐ移動やけど』

もう朝か。

あれからずっと寝てたなんて。

どうりで少し気分が悪い。

『…なんか、あったか？』

「え？」

『目、泳いでるで』

「あっ」

この人はそういう癖を何でも知ってる。

気持ち悪いくらいに患者を見てる。

「別に、何でも無いです」

『嘘つくの下手やなー、笑俺には何でもお見通しやでっ』

そう言ってドヤ顔をかました。

悪いけど、ツッコミませんよ。

『言えるんやったら、言ってもええんやで？』

別に、言いたいわけじゃないけど。

「…夢、見た。昔の」

『そっか。どんな？』

「カッター、持ってて。投げ、たら、あの人いて…っ」

『そっかそっか、それは怖かったな。』

『でも大丈夫やで。俺がここにいるやんか。なーんも怖いことない』

そう言って、頭をポンポンした。

…何で、この人といると落ち着くんだろう。

まだ何にも、分からない。

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『落ち着いた？』

「はい｣

『じゃあ、移動するか』

そのまま先生の後ろを付いていく。

この移動が一番怖い。

色んな場所に色んな人がいるから、いつ誰がどんなことをしてくるか分からない。

「こんにちは」だなんて挨拶をしてくる人もいるけど、返せるわけがない。

グレーのパーカーを深くかぶって下を向く。

なるべく、目を合わせないように…
目を、合わせないように…！

しばらく歩くと、中間先生がドアを開ける。

精神科病棟の扉…だと思う。

あんまり病室から出たことがないから、2、3回しか通ったことがない。

まあまあ頑丈な気がする。

ここの扉を入れば、もうちょっとだったはず。

やっと休める。

と思った瞬間、前からドンッ！と誰かがぶつかってきた。

…嫌、怖い。

下を向いて歩いていたから、自分の足しか見えてなかったのに、近くにもう一つの足がある。

早く。早くどっかいって。

そんな思いとは裏腹、その誰かは話しかけてきた。

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