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▲▽▲▽


瞼を開けると目の前に広がるのは白い天井。首を動かして周りを見ると、水色のカーテンで空間は仕切られていた。なんとなく薬品のような匂いはするが、病院のような居心地悪い空間ではない。


「光くん……」


カーテンを少し開け、躊躇いながら顔を覗かせたのは裕翔。僕と目が合った瞬間、裕翔は咄嗟に下を向いた。


「さっきは……ごめん」


裕翔は頭を下げて謝った。しなやかな体を勢いよく曲げ、僕がいいよと言うまで頭を下げたままだった。


「光くんのこと……知らなくて、腕掴んじゃったから……」


言葉を詰まらせながら一生懸命に言う裕翔。そこまで謝られると、こっちまで申し訳なくなってしまう。


「言ってなかった俺も、悪いから……」


僕は体を起こした。まだ頭がガンガンして、視界が回る。よろめいた僕の体を、裕翔が支えてくれた。

チャイムが鳴る。外は既に暗く、街灯がほんのりと輝いていた。静まり返った空間に、裕翔が息を吸い込む声が聞こえた。


「光くん……」
「ん?」
「こんなときに言うのもどうかと思うけど……」


__有岡くん、八乙女が付き合い悪いって、怒ってた。


裕翔は言いづらそうに下を向いたが、俺は咄嗟に裕翔の肩を叩いた。


「誤解だよ」
「でも……」
「大ちゃんはそんなこと言わない。それに僕のこと、八乙女じゃなくてひか、って呼ぶし。誰かと間違えてるんじゃない?」
「でも、誰かが光くんの悪口言ってるんだよ、許しちゃうの?」
「僕には、僕を信じてくれる人だけいればいいから。僕もその人だけを信じるよ」


裕翔はごめん、と一言呟くと、足元に置いていたカバンとブレザーを手に取った。


「俺、もう帰るね」
「うん」


光くんも一緒に帰る?と誘われたが、まだ頭の感覚はふわふわとしていたからとりあえず断った。裕翔は踵を返すと、元気のなさそうな後ろ姿を見せながら教室を出た。

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しふぉんぬ(プロフ) - うみさん» ヤンデレ通り越して軽くサイコパスですが。 (2018年4月17日 22時) (レス) id: 731333610b (このIDを非表示/違反報告)
うみ(プロフ) - ヤンデレっていいよね !! 裕翔君のキャラすこ (2018年4月17日 21時) (レス) id: 0912b72df7 (このIDを非表示/違反報告)
しふぉんぬ(プロフ) - ムーミルさん» ムーミルさん初めまして!コメントありがとうございます。楽しんでもらえてるようで私も嬉しいです(*^^*) 更新も頑張りますのでこれからもよろしくお願いします( ..)" (2018年4月6日 18時) (レス) id: 731333610b (このIDを非表示/違反報告)
ムーミル - 初めまして。君と溺れて、ドキドキしながら読ませていただいています。  影なから応援していますので焦らず更新頑張ってください! (2018年4月6日 18時) (レス) id: 0645e67767 (このIDを非表示/違反報告)
しふぉんぬ(プロフ) - ラーグさん» 既視感のある設定ですみませぬ ありがとう!頑張りマース (2018年4月2日 7時) (レス) id: 731333610b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しふぉんぬ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年3月31日 11時

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