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薄暗い廊下を、裕翔と2人、ゆっくりと歩く。教室棟には誰もいないようで、ふたりぶんの足音だけが響いた。
「ここが理科室。隣が準備室ね」
僕は古びたドアを指さしたあと、裕翔の顔を見た。刹那、裕翔と目が合った。てっきりドアの窓部分から教室の様子でも覗いていると思ったのに。
「ど、どうかした?裕翔」
「あっ、いや、なんでもないよ」
裕翔は慌てた様子で目を逸らしたから、僕は不意に恥ずかしくなった。なんか僕だけが意識しているみたいで……。
「光くん」
「はいっ!?」
「ふふっ……次、いこ?」
裕翔は僕の裏返った声を聞いてくすくすと笑いながらも、廊下の先を指さして僕の腕を引いた。
「光くん、ここは?」
「ここは今は使われてないの。吹奏楽部かなんかの部室だったみたいだけど、人数が減ったらしくて」
裕翔はふーん、と言ってドアを開ける。暫く使われていないだけあって、ちょっと埃っぽい。裕翔吐きにせず教室に入っていく。僕も慌てて裕翔のあとを付いた。
「綺麗なのにね、もったいない」
裕翔は部屋を見回し、窓の外を見て立ち止まった。
「そうだね、わりと綺麗に整頓されて……」
「違うよ」
「え?」
裕翔は窓の外に向けていた視線を僕に向けた。表情は夕日の逆光でよく見えない。
「俺が言ってるのは、光くんのこと」
裕翔はそう言って僕の方に歩いてくる。何もされていないのに、裕翔なら何もしないと分かっているのに、反射的に足が下がってしまう。
「ゆ、ゆうと……?」
壁際まで追い詰められた僕の目の前に、裕翔の影が覆い被さる。怖い。怖い……
「こーんなに綺麗なのに、もったいない」
裕翔の細くて白い指が僕の肌を撫でたあと、僕の手首を掴んで壁につけた。動けない。動こうとしても裕翔は腕を離してくれない。
____なんで言う通りにできないんだ!
トラウマが鮮明に蘇る。相手が裕翔だと分かっていても、脳内再生は止まらない、止められない。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
そうしているうちに全身の力が抜けて、埃だらけのフローリングに倒れ込んだ。最後に聞こえたのは、ひか、ひか、と叫ぶ大ちゃんの声だけだった。
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しふぉんぬ(プロフ) - うみさん» ヤンデレ通り越して軽くサイコパスですが。 (2018年4月17日 22時) (レス) id: 731333610b (このIDを非表示/違反報告)
うみ(プロフ) - ヤンデレっていいよね !! 裕翔君のキャラすこ (2018年4月17日 21時) (レス) id: 0912b72df7 (このIDを非表示/違反報告)
しふぉんぬ(プロフ) - ムーミルさん» ムーミルさん初めまして!コメントありがとうございます。楽しんでもらえてるようで私も嬉しいです(*^^*) 更新も頑張りますのでこれからもよろしくお願いします( ..)" (2018年4月6日 18時) (レス) id: 731333610b (このIDを非表示/違反報告)
ムーミル - 初めまして。君と溺れて、ドキドキしながら読ませていただいています。 影なから応援していますので焦らず更新頑張ってください! (2018年4月6日 18時) (レス) id: 0645e67767 (このIDを非表示/違反報告)
しふぉんぬ(プロフ) - ラーグさん» 既視感のある設定ですみませぬ ありがとう!頑張りマース (2018年4月2日 7時) (レス) id: 731333610b (このIDを非表示/違反報告)
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