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「まあ小雨ですし。一部しか曇ってないですから、月も見えますよ」
「え、……あ! 本当だ!」
街灯と月の光が雨粒を視覚化する。
風に揺られて角度を変える雨は、さっきの心細さなどまるで感じさせなかった。
そんなのは気のせいだとでもいうように。
「何だか幻想的ですねえ」
「そうですね」
いったん会話が終わると、結局用件は何なんだろうと気になる。でも自分から何度も用件はと聞くのは電話を切りたがっているようで気が引けるし。
私はこの通話を終わらせたくないと感じていた。
やっぱり、河村さんの声は柔らかくて安心するから。
「……これで寝れますか」
「え?」
「何でもないです」
「寝れますか、って……え、え、もしかして私が眠れないって言ったから、電話してくださったんですか!?」
「聞き返したくせにしっかり聞いてるじゃないですか! 二度と言いません」
自然と口元が綻ぶ。嬉しさで心が満たされた。
「河村さん、ありがとうございます」
「声が笑ってますよ。……まあ、寝れそうならいいですけど。切りますね」
「はい。実はもう眠くて、ふわぁ……へへ、ありがとうございました。おやすみなさい河村さん」
「……おやすみなさい、戸代さん」
優しい空気に包まれて私はそのまま眠りについた。
夢で河村さんが魔法使いになっていたことは、次会った時の話題にしよう。
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れのん - 短編集完結、お疲れ様です〜!!kwmrさんのお話もありがとうございました、とっても素敵でした…!!kwmrさんらしい優しさにドキドキしました…!!!長編も楽しみに待ってます!ありがとうございました!! (2018年10月16日 23時) (レス) id: 90e7c9629e (このIDを非表示/違反報告)
三星(プロフ) - れのんさん» こんばんは。コメントありがとうございます! 続きが遅れまして申し訳ないです。とても楽しいリクエスト、嬉しかったです。最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2018年10月16日 22時) (レス) id: 49fd1affdc (このIDを非表示/違反報告)
れのん - 更新ありがとうございます〜〜!!現段階でもすごくドキドキします……!!続き待ってます!! (2018年10月12日 23時) (レス) id: 90e7c9629e (このIDを非表示/違反報告)
れのん - 三星さん» ありがとうございます!!いつまでも待つのでゆっくり更新なさってください。 (2018年10月10日 21時) (レス) id: 90e7c9629e (このIDを非表示/違反報告)
三星(プロフ) - れのんさん» れのんさんこんばんは。コメントありがとうございます〜〜。嬉しいお言葉、幸せです。kwmrさんのリクエストもありがとうございます。次回更新時に書きますのでお待ちいただけると嬉しいです。今後ともよろしくお願いします〜〜 (2018年10月10日 17時) (レス) id: 49fd1affdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三津 | 作成日時:2018年9月14日 17時