飛影捕獲大作戦！？ (ページ27)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:5,681 hit

焦りページ27

日が翳り始めた頃、蔵馬は母親からの電話に耳を傾ける。

「秀一、もう準備は出来たの？」

「うん、大体ね。あ、ちょっとお客さんがきたみたいだから切るよ。母さん、楽しんできてね。」

自室で明日からの出張準備の途中だった。家族旅行中の母親から掛かってきた電話を切ると、気配を察知した背後の窓際を振り返る。

「飛影ですか？待って下さい、すぐ開けますから。」

珍しい来客もあるものだと窓際に近づくと、その時目に入ったのは仲間の顔ではなく抱かれたまま動かなくなった彼の恋人の姿だった。

蔵馬は慌ただしく窓を解錠すると直ぐ様仲間を部屋に招き入れ、緊迫した面持ちで飛影に目を向けた。

「Aちゃん…。飛影、彼女は一体…」

飛影は彼女をベッドにそっと寝かせると、Aが氷泪石を持ったまま部屋を出ていった事。そして神社の階段で倒れていた事も付け加えて言葉少なに説明する。

「成る程。戻らない彼女を邪眼を使って探したら倒れていた、というわけか。そういえば彼女が持っていった氷泪石はどうしました？」

蔵馬からの質問に、飛影は首を振った。石が目当の何者かに襲われた可能性が脳裏を過り示唆すると、どうやら彼も同じ考えを持っているようだ。
握られた掌からは血が滲んでいた。

「あのブタ野郎のような下衆が他にもいたとはな。」

垂金が死んだとはいえあの手の輩を完全に消し去る事は不可能に近い。妹の一件もあり、抑え切れぬ怒りを全身に纏う飛影。

“となれば、氷泪石は結界の中か何者かの腹の中なのか。”

もし邪眼で見付かっているのなら、彼女を傷付け石を奪った奴を飛影が放っておく筈がない。

蔵馬は植物の種を出してAの額に張り付けた。

「なんだそれは。」

「彼女の記憶を辿るんですよ、一時間前までが限度だけどね。」

植物はみるみる成長して小さい花を咲かせた。
開花と同時に飛ばした花粉が煙となり、記憶を映像として流せるらしい。

始まった映像の中の彼女は泣いていた。