お互いの気持ち ページ22
洞窟内に響く吐息と、角度を変えられる度に漏れる湿った音が妙な気持ちを掻き立てていく。
漸くして解放されると互いの紅潮した顔から、砂糖菓子みたいに甘い蜜が糸を引いてた。
飛影は表情を見られたくないのか両膝付いて背中を伸ばすように身を起こすと、逞しい腕が私の背中を包み込みそのまま信じられないくらい優しい力でそっと引き寄せられるとそのまま胸板に顔を埋めた。
私は心地好さに自然と瞳を閉じる。
「……好き。」
躊躇う事なく気付いたら呟いてた。
「出逢ったばっかりだけど。…飛影は妖怪で、私は人間だけど…好きになっちゃった。」
告白に対する返事は無かった。
だけど唇に再び軽いキス、今度は優しく触れるだけの。
唇が離れると遠慮がちに私も背中に手を回してみると飛影の指が後頭部の髪を梳かすみたいに滑った。
言葉ではまだちゃんと伝えてくれないけど、これから一緒にいていいって事かな？
期待してもいいってこと？
まだまだ彼をちゃんと理解してる関係ではないけど、好きとかそういうのを口で伝えてくれるようなタイプじゃなさそうだし、彼なりの精一杯の愛情表現な気がして私の心は満たされていく。
抱きしめ合ったまま会話も続かないことが何だかとても照れ臭くて堪らなくて、こんなに余裕ないのって私だけなのかなって思ったらちょっぴりそれが悔しくて、顔を上げると飛影と近距離で視線を重ねて微笑んだ。
「捕まえちゃった…。鳥じゃなかったけどね。」
無意味な強がりを口にするのが精一杯。
「調子に乗るな。」
ようやく口を開いた彼から漏れた不服そうな声音に今度は自然と笑みが溢れる。
「……ほんとに大好きだよ。」
今度は飛影が耐え兼ねて視線を横に外した。
紅潮する頰と居心地悪そうな何とも言えない表情から、飛影も私と同じでホントは余裕なんてないのかもって思ったら幸せな気持ちで胸が一杯になって、今度は自分から唇を重ねた。
伝わる温もりに今度は少し余裕のある心地良さを感じる。
ずっとこうしてたいな…。
いっそこのまま時が止まってしまえばいいのにって本気で願うほどに、もう私はあなたに夢中なんだ。
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作者名：ゆめ | 作成日時：2021年10月8日 3時
