混乱 ページ20
「煩い。騒ぐな。」
「イヤだ！離して！！…本当に飛影くんなの！？」
ガクガク震えながら必死で声を張り上げて訊ねる言葉に舌打ちする音が聞こえたかと思えば、明るく照らされた彼の手が視界に入る。その掌には、新品同様の蝋燭が握られていた。
「それ…って…」
「アイツが大量に隠し持っていたからな。」
「あいつ…？」
私の二つの質問の答えは、動き出した彼が照らした場所にあった。
地面に大の字で横たわるコウモリに似た大きな生き物。その周りに、同じ大きさの新品の蝋燭が散乱している。
「吸血人間。本来は身近な人間に化けてを獲物に近付く事からその名が付いたんだろうが、今回は化けた相手が悪かったな。」
彼の説明の後、情報を補うように別の声が別の辺りから聞こえた。
「中でもこのべラという妖怪は片想いの異性に化け油断をさせるだけでなく、一定量吸血した後暗示を掛けた上で淫魔紛いな行為も行っていたらしい。」
「蔵馬くん！」
突如姿を見せた蔵馬は、ぼたんからの新たな情報から得た知識を告げると胸元から出した種を床に投げる。
白粉花の種によく似た黒くて小さな球体が割れると、一瞬のうちに蔦がくねくねと洞窟の壁を伝って覆い、大きな蕾が電球のように光って辺りを照らす。
私は地面にお尻をついて座り込み、熱を帯びた顔を両膝に隠した。
訳が分からない。
まだ恐怖の余韻が残る中、自分の身に起きた出来事を上手く頭の中で整理出来ない。
その上やむを得ぬとはいえ、今しがたさらりと片想いをばらされてしまった。
ドキドキする心臓の音も火照った顔も恐怖故なのか、それとも気持ちが相手にバレたことからなのか。
その両方なのか…頭も心も熱にのぼせたみたいにぐるぐるして、自分で自分がわからない。
「俺はこの指名手配犯を連れて帰るよ。飛影はAちゃんのこと頼みますよ？」
「冗談言うな。何故俺がそんな面倒を…おい、待て！」
飛影の反論虚しく、指名手配犯の身体を抱き上げた蔵馬は早々に立ち去ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 14人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆめ | 作成日時：2021年10月8日 3時
