第一夜 ページ3
「さて……ジャーファル。まだ来ないのか?Aは」
八人将の紹介が終わり、シンドバッドが政務官の男ーージャーファルに話しかけた。話しかけられた彼は、困ったような顔を浮かべる。
「私に聞かれましても、…まともに話せるような相手ではないでしょう」
「それもそうだったな……」
どうしたものか、と顔を曇らせるシンドバッドの元へ向かうアラジン。その後ろにアリババが続いていく。
「Aさん、って誰のことだい?」
興味津々なアラジンとアリババに、シンドバッドは苦笑いしながら答えた。
「ああ、……君達と同じ客人さ。数年前から謝肉宴の時だけ、国民の前に姿を現わすんだ。性格に似つかわしくないほど、外見だけは美しい奴さ」
外見、の部分を強調して言うシンドバッドに、目を輝かせる男二人。そこに、ジャーファルが咳払いをして王の器であるアリババに言った。
「"彼"は危険ですから、……アリババくん。君は、私の後ろにいてください」
え?と困惑を隠しきれないアリババの前に立つジャーファル。その顔は最早政務官ではなく、暗殺者の顔だった。
「……来ます」
怖い顔をしながらファナリスの彼女ーーモルジアナがそう言った途端、誰もいない場所に雷が落ち、突如そこにだけ雨が降り始めた。
それは、きっと五分とかそんな短い時間だったのだろう。されど、"其れ"を初めて見る三人にとっては十分にも二十分にも感じていた。
雨が止み、雨雲も去っていく。霧も晴れ、だんだんと見えてくるーー誰もいなかった場所に、彼は居た。
?? 突如湧く歓声に嫌な顔一つせず、彼は笑みで受け入れる。その無駄のない、…隙のない動作一つ一つにアラジンは目を奪われていた。
「……あれが、Aですよ」
ジャーファルがそう言うと、今まで人に好意的な態度で接していた彼の表情から、笑顔が消える。
「人の名前勝手に呼ぶな、政務官が」
その声と共に、離れた場所にいた筈の彼はいつの間にかアラジンの隣に立っていた。
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スノーマン - 面白いですね、もし続きがあれば楽しみにしています! (2018年12月24日 11時) (レス) id: acf7bd7114 (このIDを非表示/違反報告)
apipe - 続き楽しみにしてます! (2018年11月23日 3時) (レス) id: 6a53dc23ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れんと | 作成日時:2018年11月1日 12時