第十六夜 ページ19
「調子に乗んな、この文官が。……俺に指図をしていいのはシン様と、炎帝だけだ」
先程モルジアナに蹴られ打った頭が、今更になって痛くなる。ガンガン、と何かをぶつけられたような痛みに顔を歪ませながらも目の前のこの男の脳天目掛け、脚を繰り出す。
「いつもよりキレが無いですよ。…心が乱れているのでは?」
人間みたいですね、と余裕のある笑みでそう言うアイツはいつも逃げてばかりだ。こちらへ反撃することはない。
「そう言うところも、全部……俺の父にそっくりだ」
「へえ、……貴方の父親はどんな人だったんですか?」
「お前みたいなやつだよ、クソ政務官……!」
両手を合わせ、炎を繰り出す。呪文なしでも出てくるこの桃色の炎は、俺の力ではない。
『殺せ、殺せ』
不死鳥と讃えられた、死にかけた可哀想な小鳥の力だ。
『王を、殺せ』
『ーー人間を、殺せ』
桃色の炎は、俺の意思に関係なくアイツの元へと一直線で飛んでいく。復讐、それだけで繰り出される炎は、きっと本人でも制御のつかないものなのだろう。
でも、俺は知っている。アイツは、こんなもので死なないと。
『死ね』
心の中で呟かれるその言葉の重みに、また一つ顔を歪めた。
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スノーマン - 面白いですね、もし続きがあれば楽しみにしています! (2018年12月24日 11時) (レス) id: acf7bd7114 (このIDを非表示/違反報告)
apipe - 続き楽しみにしてます! (2018年11月23日 3時) (レス) id: 6a53dc23ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れんと | 作成日時:2018年11月1日 12時