4.怒りと羞恥心 ページ5
「……よ」
『よ?』
「よろしく何てしたく無いよ!!」
渾身の思いを込めて叫んだ。こんなことを言っても離れてくれそうに無いと分かっていても、どうにかしてこの不可解な状況から抜け出したいと抗っている。
殺されるかも…何て物騒な事を思いながら瞑っていた目を薄く開け、チラリと黒い影を盗み見た。
影は目をパチクリとさせてポカンとしていた。
そしてプルプルと体を震わせて何かに耐えている様だった。
何をされるのかと身を固くして身構えると、もう耐えきれないとばかりに影は大きく笑い出した。
『ウハハハハハハッ!!!
もうお嬢さん最ッ高!! “よろしく何てしたく無いよっ!” だってさ! ハハハッ』
「なッ!!」
怒りと真似された恥ずかしさで顔が真っ赤になる。
それでも羞恥心を逆撫でする様に声をわざと高くして何度も真似をする影の口を、手を伸ばしてガバリと塞ぐ。
『もがッ!?』
「もう黙ってよ!」
ググ…と口を押さえて涙目で必死に訴える。
ぐるぐると腕に黒いモノが巻き付いてベリッと無理矢理口から離された。
『ブハッ!! ッお嬢さん何してんのさ!!
息出来ないでしょうが!! 物凄い苦しかったんですけど!?』
何と。それは初耳だ。
本当に苦しそうな影を見て一気に罪悪感が湧き上がる。
「あ…えと……ごめんなさい……
苦しいとか考えてなかった」
そう謝るとゲホゲホと咳をしていた筈なのにケロリとした様子で自分を凝視してくる。
『お嬢さん……やっぱりアンタ最高』
「え…?」
『オレがお嬢さんの様な細腕の女の子に口塞がれたからって苦しむと思う?
ていうかそもそもオレの口の場所なんか決まって無いし。
出そうと思えば何処にでも口作れるし。』
「え…?
どういう……?」
『ウン。やっぱりお嬢さんのコトずっと狙ってた甲斐があった!
今は人の形に近くしてるからこの口から声出してるけど、さっきはアンタの頭の中に直接響く様な声だったでしょ?』
ぐるぐるぐる。
そんな風に一気に説明されても訳が分からない。
…でも、ひとつだけ分かったこと。
さっきの苦しそうな姿は全て演技だったということだ。
罪悪感は一気に吹き飛び、代わりにまた怒りが湧き上がる。
『お嬢さん、これから色々教えてね?』
「絶対嫌だ!!」
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ソルジャードリーム - 更新楽しみに待ってます!( ☆∀☆) (2015年5月9日 11時) (レス) id: 5aa7608348 (このIDを非表示/違反報告)
なのん - 更新早くーーー!面白すぎ!!つづきがきになる(>∀<) (2015年2月8日 8時) (レス) id: 2357c02e3c (このIDを非表示/違反報告)
悠 - この小説良いですね!更新頑張って下さい!!応援してます!! (2014年9月30日 21時) (レス) id: 266b54b8e8 (このIDを非表示/違反報告)
のほほん族(プロフ) - 私、この作品好きです。更新頑張って下さいね(^o^) (2014年9月27日 22時) (レス) id: c0269819b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆粒 | 作成日時:2014年9月16日 7時