20.お届け物と視線。 ページ21
いつもの様に帰ろうという予定は変更。
男子に頼まれた物を先生に届けなければならない。
「ホンットにありがと!
それじゃ、お願いしますっ」
手をバチンと顔の前で合わせて拝む様な体制だ。
「いいよいいよ。
それより早く行かなくていいの?」
「あ! そうだ
頼んだ意味なくなるじゃん! じゃ、じゃあ行ってくる!!」
「頑張れ〜」
キュッと上靴の音を響かせ廊下を全速力で走り出した背中を手を振りながら見送る。
次第にそのエナメルを背負った背中は小さくなり、廊下の角を曲がって消えた。
夕日が差し込み出した廊下にポツンと残されると「よし、私も行くか。」とひとり言って職員室へ先程の男子が走って行った先とは反対の方向へ向かう。
歩いている私の横には黒い影。
自分が歩けば同じ速度で着いて来る。
今この廊下には人の気配がしない。それならば黒助と話せるチャンスでは無いだろうか。
思い付き、彼の方へ振り返る。
「黒助君」
そう小声で名前を呼んでトントンと指先で真っ黒な体を叩く。
その瞬間彼は大袈裟な程体をビクリと震わせ、目を見開いてこちらを見た。
「今はさ、誰もいないから」
そう安心させる様に笑顔で言うと、居心地が悪そうに目を泳がせた。
「ゴメンね、やっぱり喋ってるところ他の人に見られたりしたらマズイから話せなくて」
『そ…んなこと無いよ
オレは、大丈夫だから』
何処か歯切れ悪くポツリと目を合わせずに言った。
真っ黒な顔からはその表情がハッキリとは分からない。けれど、昨日や一昨日の彼の様子とは違うということは分かった。
どこか元気が無い様な。
「そっか、ありがと」
『ウン』
そうこう言っている内に人の話し声が遠くから聞こえてきた。
咄嗟に口を噤み、彼に苦笑いを向けるとフルフルと緩く首を振った。
そのまま話をしながら此方へ歩いてくる生徒たちとすれ違い、早足で歩を進める。
職員室へ行く途中には図書室がある。その前を通った時、帰りに寄ってみようかなと頭を過った。
特に借りたい本は無いが、何だか唐突に本が読みたい気分になってきたのだ。
…私はその時、図書室の奥からの真っ直ぐな視線に気がつかなかった。
「失礼します。 山本先生はいらっしゃいますか?」
コンコンと軽くノックをして職員室の扉を開けた。
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ソルジャードリーム - 更新楽しみに待ってます!( ☆∀☆) (2015年5月9日 11時) (レス) id: 5aa7608348 (このIDを非表示/違反報告)
なのん - 更新早くーーー!面白すぎ!!つづきがきになる(>∀<) (2015年2月8日 8時) (レス) id: 2357c02e3c (このIDを非表示/違反報告)
悠 - この小説良いですね!更新頑張って下さい!!応援してます!! (2014年9月30日 21時) (レス) id: 266b54b8e8 (このIDを非表示/違反報告)
のほほん族(プロフ) - 私、この作品好きです。更新頑張って下さいね(^o^) (2014年9月27日 22時) (レス) id: c0269819b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆粒 | 作成日時:2014年9月16日 7時