#13 ページ13
side_Taiga
まるで捨てられた子犬のようにポツンと
ひとりぼっちだった大我を拾った。
ボロアパートの2階にある部屋に招き入れると、
大我はもの珍しそうに家の中を見渡す。
｢晩飯もう食った？｣
｢まだ…｣
｢カップ麺しかないけどいい？｣
｢カップ麺…？｣
｢…お前、もしかしてリアル金持ち？｣
大我は本当にカップラーメンを知らないよう
だった。
俺がお湯を注ぐのも、3分待っている間もずっと
そばでそれを眺めていた。
そして蓋を開け、中にあるラーメンに
目をキラキラと輝かせる。
｢…ラーメンだ！｣
そう言って大我は音を立てず綺麗にラーメンを
食べ進めた。
俺も隣で食べ始めると、
突然、大我がぐすぐす鼻を鳴らし始める。
熱かったのか…と大我の方を見れば、なんと大我は
泣いていた。
｢…そんなまずかった？｣
｢違う。違くて…なんか、こうして誰かと温かい
ごはん食べるって久しぶりで…嬉しくて｣
…俺なんかと一緒でも嬉しいのか。
｢…変なの｣
｢…樹は一人暮らし？｣
｢まぁ、いちお｣
｢寂しくない？｣
｢別に、もう慣れたし｣
物心ついた時、母親はもういなかった。
父親の顔を覚える暇もなく、俺は施設へと
捨てられ、それからずっとひとりぼっち。
中学を卒業とともに施設を飛び出し、
こうしてひとりで生きている。
｢えらいなぁ…｣
偉くなんかない。
俺はただ逃げてるんだ。
周りの人間と自分を比べるのが怖くて、
自分に絶望するのが怖くて、逃げている。
｢大我のほうがえらいよ｣
俺がこぼした言葉は必死にカップ麺のスープを飲む
大我には届かなかった。
泣きながら美味しそうにカップ麺を食べる大我が
なんだか嬉しくて、俺はめずらしくスープまで
平らげてしまった。
｢…ごちそうさまでした｣
｢風呂入る？｣
｢いいの？｣
｢俺と一緒に入るなら｣
そう言うと、大我はこの世の終わりかと思うほど
嫌そうな顔をした。
｢…冗談だよ｣
大我は俺を怪しむような顔をしながら風呂へと
向かった。
.
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Ab - Chewing gumすごく面白かったです！ 一番好きな部分は樹がいなくなったあとのきょもほくの部分です！ 終わり方は本編の方が好きだけど、おまけのもとても悲しいというか…切ない気持ちになりました！読み終わってしまったので、続編期待です(*´∇｀) (2020年6月4日 22時) (
レス) id: e4fda0cb3d (このIDを非表示/違反報告)
りー、(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すごく引き込まれて、最後号泣しました、、また読ませていただきます！ (2020年4月27日 0時) (レス) id: 58a48f28a2 (このIDを非表示/違反報告)
E2pcw68JoClAW94(プロフ) - 最後に素晴らしい作品と出会えてとても嬉しく思っています！！新作も読ませていただきます！ (2020年4月2日 9時) (レス) id: 73e14c48e0 (このIDを非表示/違反報告)
E2pcw68JoClAW94(プロフ) - 完結おめでとうございます！どちらの終わり方もきょもと樹らしい終わり方だなと思います！44の最後の細身の男性は誰だったのか気になります。慎太郎なのかなと思う気持ちと細身だから違うのかという気持ちがあり、気になってしまい質問させていただきました！ (2020年4月2日 9時) (レス) id: 73e14c48e0 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 完結おめでとうございます。そして素敵な作品をありがとうございました。きょも樹が大好きでこの作品は特に引き込まれました。ぜひまた機会があればきょも樹の作品を作って欲しいです。これからも頑張ってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: d7589ab1a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さいか
| 作成日時：2019年9月15日 16時
