21.警報 ページ21
_逃げない理由があるとするならそれは君だ。
_私は本気だ。
_ヒソカと話してると安心するんだよ。
『私と一緒に逃げないかい?ヒソカ』
………。
彼女の言葉が離れない。頭の中で反響して幾重にも重なってまるで警告音の様に鳴り響いていた。
流れのまま受け取ったパンの味も全く分からない。
ボクの心中はこんなにも混乱しているというのに、目の前の彼女は呑気に寝っ転がって床の棒を数えていた。
…ただ、それだけなのに彼女がやると意味のある行動に見えてしまう。
棒一つ一つを指す白い指は清廉で、細やかで、どこか品を感じさせる。…彼女はただ、棒を数えているだけなのに。
『…ヒソカ?』
「!あ、いや」
見ていたことに気づかれた。咄嗟に目線を反らす。明らかに何かあるのはバレバレだった。…今のボクにはそれだけ余裕がない。
『…何か聞きたいことでも?あるなら、もうゲームじゃないし自由にどうぞ。ただ、ゲームじゃないから必ず答える保証はないけれど』
彼女は棒を数えるのを止め、ボクを見る。宝石のような碧がボクに向いた。
…ドクリ、と血液が流れるのを鮮明に感じた。警告音が一層鳴り響いた。
それのせいか…開きたくない口が勝手に開いた。
「……ねぇ、なんでそんなにボクに優しくするの…」
『!』
弱々しい声だった。…ボクの嫌いな声だ。けれど、この感情をボクは知らない。だから自分で処理することが出来ない。溢れだす感情を押さえることができなかった。
…彼女がボクをどんな目で見ているのかと考えて、本能的に恐怖を感じる。
…彼女は…憐れんでいる?蔑んでいる?悲しんでいる?喜んでいる?…見たくない、見たくない。全部全部、いくら彼女でも今はどんな顔も見たくない。
『…優しい、か…』
そう彼女が呟いた。
『…そう言われるとは思ってなかったな』
彼女の声には色が無かった。…ボクに向けられた言葉じゃない。もしかしたら独り言なのかもしれない。
そこに少しの余裕が生まれた。そっと顔を上げる。
『…ん?あーいや、自分の思っていたことと違かったから……まぁ、違うと言ってもいい方向なのか…』
彼女は納得するように頷く。
『私自身はヒソカに別段優しく接した気は無かったんだけれど……て、それはいいか……えっと、どうして優しくするのか、だっけ?』
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キヨラ - これからもがんばってください。 (2018年10月23日 18時) (レス) id: 6e365f857a (このIDを非表示/違反報告)
Justice RPG(プロフ) - 花菜さん» そう言って頂けると嬉しいです!続編まで行きました!引き続きお楽しみ下さい。 (2018年3月27日 18時) (レス) id: 14e35c6c6f (このIDを非表示/違反報告)
Justice RPG(プロフ) - sataroさん» 励みのお言葉ありがとうございます!続編まで行ったのでお楽しみ頂ければ幸いです。 (2018年3月27日 18時) (レス) id: 14e35c6c6f (このIDを非表示/違反報告)
花菜(プロフ) - すごく面白くてとても続きが気になります!!更新がんばってください!(*´∀`*) (2018年3月21日 14時) (レス) id: b7876a4134 (このIDを非表示/違反報告)
sataro - 凄く読みやすく面白いので続きがまだかまだかと気になります笑更新応援しています! (2018年3月15日 16時) (レス) id: 4a264aed23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Justice RPG | 作成日時:2018年1月7日 2時