92._願望 ページ43
「あやしい…というか、無防備だと思ったの」
彼女が敵である可能性はゼロではないが、ヴェーゼの考えはそうではなかった。ハンターライセンスというのはライセンス自体に莫大な価値があるが、それ以上に個人情報の塊のようなもの。番号をたどれば個人の特定は容易だ。……こんな人目につく場所で簡単に出すものではない。どうにも危機感が足りないと思った。
「無防備ねぇ……もしかしたら逆かもしれないぜ？」
「逆？」
シャッチモーノの言葉にヴェーゼは疑問を返す。
「よほど自信があって、身元が割れてもなにも困らない。隠す必要はないってことだ」
シャッチモーノは半笑いで言う。それは真剣というよりも冗談に近かった。そもそも彼女が敵かどうかなんてわからないからだった。
「お喋りはそこまでだ。そろそろ移動するぞ」
イワレンコフの言葉でヴェーゼは考えを止める。今は仕事中で彼女の話をしたのもたまたま目に入ったからで、世間話のようなもの。会場に入った頃には競りへの意識へと変えていた。
「…………」
ヴェーゼはつい数十分前の出来事をフラッシュバックしていた。
それから、どうしてもっとよく考えなかったのか、と思った。目を向けたということはなにか違和感を感じたということ。……いや、気づいたところでなにも変わらなかった。
体から力が抜け、倒れる寸前、視界がスローモーションのようにゆっくりと流れる。……遠くで戦う彼女からはサングラスが取れていて、恐ろしく綺麗な深緑の瞳が一瞬こちらを見る。
彼女は敵ではなかった。そして、少なくとも自分たちよりもはるかに強かった。彼女ならどうにか外に状況を伝えられるかもしれない。
瞳は驚くことも気遣うこともなかった。
瞳は戦っている敵に視線を戻す。そこには感情があった。金髪の男に向けたような親しみ。
「……」
違う。希望は願望でしかなかない。
彼女は味方でもなかったのだと、死を感じなから知った。
知ったところで自分にはそれを伝えられる術はないことを悟った。
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ソマリ(プロフ) - すごく面白いです！読んでる間時間を忘れてました！続き楽しみにしています。 (2021年2月26日 13時) (
レス) id: 0472de010a (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。まだ確定ではないのですが長らくお待たせしているので投稿しました。そのうち勝手に編集するかもしれないデス。 (2021年2月12日 0時) (レス) id: 74382eb008 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - いつも大変お世話になっております。ついにヨークシン編へ!!わが最推しのクロロの活躍が待ち遠しいです。作者様もどうかお体にはお気を付けて、また続きを恵んでくださればと思います。お待ちしております！！ (2021年2月6日 0時) (レス) id: c902458bf8 (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。いよいよヨークシン編に入ります(まだ何も書いてないけど)。ここまでくると以前と言ってたこと違う、みたいなのがあるかもしれません(私は結構忘れてます)。指摘して下されば直します。優しく指摘して下さい(フリではないです)。 (2021年1月15日 19時) (レス) id: ec296045c3 (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。更新しました。題名が被ってるときはわざとの時と忘れて使っている時があります。基本は被らないように頑張ってます。あと、題名で中身が丸わかりにならないように頑張ってたりします。お陰で変な題名が多くなってしまった。 (2021年1月13日 23時) (レス) id: ec296045c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：JRPG
| 作成日時：2020年12月9日 0時
