碧は染まった2【H×H】

60._半神 ページ10

〈クリーンヒット2P！！これでA選手10P！TKO勝ちです！！〉

実況が響き渡ると同時に観客の歓声が一気に湧いた。…この騒音にも少しは馴れてきた。多くの人に注目されるのは慣れていない。好き、という訳でもない。今までどちらかというと人目を避けてきたからな…。なんだか新鮮な気持ちだった。

〈A選手はこれで150階クラスとなります！！美しき戦乙女(ヴァルキリー)の快進撃は一体どこまで続くのか！！〉

アナウンスの言葉に私は少し体を強ばらせる。…ヴァルキリーか。

初戦から三日間、私は順当に勝ち進めることができていた。今の試合で150階、あと5戦今のように勝てば200階に到達する。

その折り返し地点の現在に至るまでになぜかそんな呼び名がつけられていた。

ヴァルキリーは北欧神話に出てくる半神であり、戦場で生者と死者を定める役割を持っている。…こちらに私の知っているような北欧神話はないが、似たような神話は存在しておりそれなりに人々に浸透しているようだった。

ヴァルキリーは女性であるため、別名"戦乙女"とも呼ばれる。これまで全勝している私をヴァルキリーと呼ぶ理屈は分かる。…しかし、"ヴァルキリー・A"と呼ばれるとどうにも海外のプロレスラーのような感覚がしてなんともいえない。あと、戦隊感もする。ヴァルキリー・レッド、みたいな。

歓声を背中に選手の入場口に引き返しほっと息をつく。

それから真っ先にゴンの部屋へと向かった。








＿コンコンコン とノックをすれば中から「はーい」と声がする。『私だけど、入ってもいいかい？』と尋ねる。

「Aさん！」

内側から扉が開き元気な声と瞳が私を捉える。自然と表情を和らげた。

『こんにちはゴンくん。中に入っても？』
「うん！」

中に入るといつもはいる銀色がなかった。

『珍しいね。キルアは？』
「お昼買ってくるってさっき出ていったよ」
『そうか。入れ違いだったか』

廊下では会わなかった。タイミングがずれたのだろう。

『点は、はかどってるかい？』
「うん。やることもないから…」

ゴンは少し自嘲気味に言う。

点、というのは彼らの師範ウイングが教えてくれたという修行の一つ。"心を１つに集中し自己を見つめ目標を定める"というもの。

念の四大行"纏"と同音なのはちゃんと意味があり、"点"は念について教える際の方便である"燃"の四大行の"点"なのである。

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