九 ページ9
『………うっわ…』
広っ、というのはまだいいとして、天井高っ。え、高。
しかも視界に入るもの全て知らないもの。こ、怖い。一歩踏み出すのがこんなに恐ろしいと思う日が来るとは。
「あ、靴脱いでね」
『あ、はい』
下駄を脱ぎそろりと一段上がる。感じたことのない感覚が足の裏から伝わってくる。うわ、わ、ツルツル。
「…Aさん?」
『は、はい』
「……大丈夫だよ。ここはからくり屋敷とかじゃないから」
『さ、左様ですか』
「ほらここに座って」
みるからに高級感の漂う椅子…。触らずとも分かる質の良さ。…本当にここに座れと?
少年は既に隣の椅子に座って私をじっと見ている。え?座って良いの?、早く座りなよ、そう…じゃあ。
無言でやり取りし、椅子に腰かける。
『…………』
なん、だこれ。
全く腰に負担がかからない。え?これ今私座ってる?と思わせるほどだった。しかも背中までふかふか。はぁぁぁ。もはや感嘆の息しか出ない。
「…フ」
『え?』
笑ったのはあの恐ろしい"くるま"という乗り物を操っていた男性。細い目は人が良さそうに見えた。
「いえ…本当に気持ち良さそうに座るなと思いまして」
『いや本当に気持ち良いですよ。まるで殿様気分…!』
柱でもこんな良い椅子に座ったことは無いだろう。そう思うとなんだか誇らしい。何に対してかはわからないが。
「それで、お話を伺っても?」
「うん。まずこの人は」
『…………………………………』
「…Aさん?」
私は咄嗟にお腹を押さえる。…そういえばここ三日間何も食べていない。さっきまで奴を追うことに集中していたから気づかなかったが……すっごくお腹空いた。
「…………もしかしてお腹減ってるの?」
『い、いやぁまさか…』
流石に寝床を紹介してもらった上にただ飯を頂戴するわけにはいかない。そこまで図々しくないぞ私は。例え三日食べていなかったとしても、三日が四日になるだけだ。ああ、我慢出来るとも。
「………お腹、減ってるんだね」
『……………すみません』
「、今何かお出ししますよ。あまりもので良ければですが」
『あ、ありがとうございます!!』
この際この男性が笑っていようが関係ない。ああ、お腹が空いたとも!
「直ぐに出来ますから、話は食べたあとで」
『はい!宜しくお願いします』
私は立ち上がり一礼すると男性は細い目を少し見開いた。
ご飯が出来るまでこの椅子の感触に酔いしれた。
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ゆら - とても続きが気になる物語だったので、時間があるときに更新よろしくお願いします。頑張ってください! (2020年6月21日 12時) (レス) id: a43add877a (このIDを非表示/違反報告)
ユナナ(プロフ) - こんにちは!"浮世離れの今日"を見させていただきました!好きな漫画がコラボで出てきている…もう喜びを超えた嬉しさです笑 後の展開がとても気になります!技の名前も高クオリティで普通に鬼滅の刃にで出来そうです笑 また続きをお待ちしています笑 (2020年1月8日 11時) (レス) id: 0bea8b4a9d (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。更新しました。楽しみにしてくださっていた方遅くなりすみません…。沢山のコメントありがとうございます。全部読んでます。引き続きお楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年10月31日 9時) (レス) id: 0e0a111648 (このIDを非表示/違反報告)
綺咲裕翔 - めちゃくちゃ面白いです!!続きが気になるー!楽しみにしてます!頑張ってください! (2019年10月27日 10時) (レス) id: 93b6603b06 (このIDを非表示/違反報告)
南無阿弥陀仏(プロフ) - 続き待ってます (2019年10月24日 14時) (レス) id: 1cf60bec73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Justice RPG | 作成日時:2018年9月15日 21時