伍拾 ページ50
『……私の呼吸に合わせて』
私は女性の腹に手を添え、言う。彼女の顔は痛みに歪み、目は助けを求めていた。
…女性の肺が上下する。
『そう……そのまま…』
暫く繰り返す。
「…止血、ですか」
『はい。といっても私が何かをしている訳ではない。これは彼女が自ら止めている』
私はその手助けをしているに過ぎない。
私は男の言葉に答える。…彼女の体は今生存しようと動いている。だからこそ出来ることだった。
ただ、この呼吸は一般人にとっては慣れないもの。血は止められても意識と気力がいつまで持つか分からない。
『…すみません。救援は』
「………既に誰かが呼んでいます。…彼女は大丈夫ですか」
『即死の位置は外れている。だから…彼女次第だ』
…腹を押さえていない方の拳を硬く握る。…少しの躊躇いが大きな災いをもたらす。そんなこと当の昔から知っていた。
あのとき私は鬼の首を斬らなければならなかった。少年に腕が伸びたならその腕も斬り落とすべきだった。
………。
いや、後悔はするな。
それも不確かな可能性で。だからこそ躊躇ったんだ。
この世界に鬼狩りは私一人。後に託せる者はいない。それも鬼は奴一体だけではない。私が死んでそれで済まない。
…幸い死者は出ていない。あくまで私の知る範囲でだが。
これが今の私にできた最善だった。
『………』
ギリ、と奥歯を鳴らす。
_弱い自分が嫌になる。
拳から血が滴り落ちた。
「………」
地面に赤い染みが広がるのをコナンは黙って見ていた。
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←肆拾九
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ゆら - とても続きが気になる物語だったので、時間があるときに更新よろしくお願いします。頑張ってください! (2020年6月21日 12時) (レス) id: a43add877a (このIDを非表示/違反報告)
ユナナ(プロフ) - こんにちは!"浮世離れの今日"を見させていただきました!好きな漫画がコラボで出てきている…もう喜びを超えた嬉しさです笑 後の展開がとても気になります!技の名前も高クオリティで普通に鬼滅の刃にで出来そうです笑 また続きをお待ちしています笑 (2020年1月8日 11時) (レス) id: 0bea8b4a9d (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。更新しました。楽しみにしてくださっていた方遅くなりすみません…。沢山のコメントありがとうございます。全部読んでます。引き続きお楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年10月31日 9時) (レス) id: 0e0a111648 (このIDを非表示/違反報告)
綺咲裕翔 - めちゃくちゃ面白いです!!続きが気になるー!楽しみにしてます!頑張ってください! (2019年10月27日 10時) (レス) id: 93b6603b06 (このIDを非表示/違反報告)
南無阿弥陀仏(プロフ) - 続き待ってます (2019年10月24日 14時) (レス) id: 1cf60bec73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Justice RPG | 作成日時:2018年9月15日 21時