肆拾九 ページ49
こちらに向かってくる少年。
目の前から伸びる鋭い爪。
少年を抱え地に伏せたのは無意識だった。
だが、そのお陰で私の心臓を狙った爪は大きく外れ、左耳を擦るだけに収まった。
「Aさん!!血が…っ!!」
腕の中で少年が悲痛そうな顔で訴えてくる。…こんな状況でまだ他人を優先するのか。その影に確かに恐怖はあるだろうに。
「Aさん!コナンくん!」
背後から男が走ってくる。…私は少年を静かに解放した。
「Aさん…?」
『…少年を頼みます。藤の花を離さないで下さい』
「!……まっ_!!」
少年の制止は遠ざかり聞こえない。
少年は大丈夫だ。信用はしていないが大人もついている。藤の花もある。
だからそれよりも優先することがあった。
先程の巨大な鳥…。あれのせいで路地と表の通りが繋がってしまった。それが意味することは、
「おい!!誰か、救急車!!」
「しっかりしろ!!」
『………』
心で舌打ち。女性が数人血を流していた。…致命傷ではないようだが傷は深い。
間違いなく奴がやった。それも私に宛てて。
握り過ぎて血が滲んだ拳を緩める。
それから息を吸って、止める。
『……影の呼吸』
_
意識を研ぎ澄ませると周囲が白黒に見えた。そこにあるのは中身。混乱と恐怖にまみれた中に、卑しい汚れた影は………。
『…………』
「Aさん!!」
_ない。
息を吐く。背後に少年が居た。横には男も一緒だ。……動くなとは言わなかったことを思い出す。
「これ、一体何が…」
『……』
私は刀を鞘に戻す。それから振り替える。一瞬少年と目が合う。……少年の肩が跳ねたのを見逃さなかった。
「あ、あのっAさん」
私は少年の横を過ぎ、倒れている女性の一人に近寄る。
「コナンくん」
「!」
背後で私の後に続こうとする少年を男が留めた。……女性の脇腹は裂かれ、血が溢れだしている。倒れている人の中で一番酷い。
致命傷ではない。ただ、このまま血が流れすぎれば死に至る。
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ゆら - とても続きが気になる物語だったので、時間があるときに更新よろしくお願いします。頑張ってください! (2020年6月21日 12時) (レス) id: a43add877a (このIDを非表示/違反報告)
ユナナ(プロフ) - こんにちは!"浮世離れの今日"を見させていただきました!好きな漫画がコラボで出てきている…もう喜びを超えた嬉しさです笑 後の展開がとても気になります!技の名前も高クオリティで普通に鬼滅の刃にで出来そうです笑 また続きをお待ちしています笑 (2020年1月8日 11時) (レス) id: 0bea8b4a9d (このIDを非表示/違反報告)
JRPG(プロフ) - 作者です。更新しました。楽しみにしてくださっていた方遅くなりすみません…。沢山のコメントありがとうございます。全部読んでます。引き続きお楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年10月31日 9時) (レス) id: 0e0a111648 (このIDを非表示/違反報告)
綺咲裕翔 - めちゃくちゃ面白いです!!続きが気になるー!楽しみにしてます!頑張ってください! (2019年10月27日 10時) (レス) id: 93b6603b06 (このIDを非表示/違反報告)
南無阿弥陀仏(プロフ) - 続き待ってます (2019年10月24日 14時) (レス) id: 1cf60bec73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Justice RPG | 作成日時:2018年9月15日 21時