59.霧のような ページ9
『っ、あつ』
彼女の悲痛な声。
Aのこんな表情、声は初めてだ。だからなのか、どこか神様のように感じていたAがより身近なものになったように感じた。
『…あつい』
あつい、あつい…と繰り返すA。しかし、Aの体は至って熱くなかった。Aの目は虚でオレたちを見ていない。
…夢でも見ているのだろうか。
彼女は今朝、火事の夢を見たと言った。そしてマチに、火事はとても熱くて、煙が染みると言っていた。
…今思えば、彼女はマチに説明するための言葉ではなく、実際に夢で体験したことを言っていたのだろうか。
だとしたら夢の続きを見ているAは、また苦しい思いをしているのだろうか。
「…抜くよ」
だとしたら早く助けないと。
そんな苦しい夢は見なくて良い。Aが苦しい思いをするものは全部オレが排除する。
＿カラン
ナイフを床に置くと金属の軽い音が響いた。
『……』
Aの表情は少し柔らかいものになった。それから"あつい"と言わなくなった。
「包帯を！」
パクノダの方を向いて言うと包帯を渡される。
ナイフが刺さっていた右肩からは血が溢れ出ていた。
＿止血するには傷口をガーゼや包帯などで巻き、上から圧迫する。これが基本かな＿
Aの言葉が甦る。
「傷口に巻いて圧迫…」
包帯を伸ばしAの腕を持ち上げ下に通す。
「…！」
そして巻こうとしたときに違和感。
「…クロロ…？」
目の前のパクノダが何かあったのかと聞いてくる。
「傷が…ない」
「…え」
「傷がないんだ…」
「！そんな、！」
嘘だ、とパクノダがAの右肩を見る。そして言葉を失う。
破れた服の奥にあった痛々しい傷が、まるで何も無かったかのように消えていた。
「…A、治ったの？」
「あ、ああ…」
「！なら良かった！」
「…そうだね…」
マチの言葉に曖昧に答える。
ああ、そうだ。どういう方法にせよ、治ったことは良いことだ。
そもそも彼女には不思議な点が多い。お腹が空かないとか、教会から出られないとか…だから、傷が直ぐ治るくらいがなんだというんだ。
「……」
Aを見るといつもの表情だった。さっきの苦しみの面影は欠片もない。服に付いている血が酷く場違いに見える。
「A…」
少しでも身近に感じたと思った彼女が、また一層遠く思えた。
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るみ - ハンターハンターにハマって、一作目にこれを見て良かったです(*^^*) (2019年1月26日 0時) (
レス) id: 07b463bee0 (このIDを非表示/違反報告)
Justice RPG(プロフ) - クラピカさん» コメントありがとうございます！第二章出来ました！！引き続きお楽しみください！ (2018年1月7日 3時) (レス) id: cd2849aff7 (このIDを非表示/違反報告)
Justice RPG(プロフ) - みるのさん» コメントありがとうございます！続編出来ました！！これからも楽しんで頂ければ幸いです！ (2018年1月7日 3時) (レス) id: cd2849aff7 (このIDを非表示/違反報告)
Justice RPG(プロフ) - 雪女さん» コメントありがとうございます！応援とても嬉しいです！続編を作成したのでお楽しみください！ (2018年1月7日 3時) (レス) id: cd2849aff7 (このIDを非表示/違反報告)
クラピカ - 第2章楽しみすぎるー！ (2018年1月3日 6時) (レス) id: 423cdf7227 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Justice RPG
| 作成日時：2017年11月8日 20時
